トランプ氏とプーチン氏のアラスカ会談後、ゼレンスキー氏や欧州首脳がワシントンでトランプ氏と会談を持ちました。ニュースのトーンではゼレンスキー氏とプーチン氏を含む二者ないし、第三者を含む会談に向けた調整を進めることで意見が一致しているようです。
ホワイトハウスXより
一方、昨日のラブロフ外相のインタビュー記事に「開催の前提として専門家レベルなど段階的な手続きを踏むことを支持する」(日経)とあります。個人的にはトランプ氏や欧州首脳はやや前のめりすぎでラブロフ外相のスタンスが一般的なプロセスのように感じます。
日本国内でも国際会議でもトップ同士の会合に至るには事務方がお膳立てをするものです。トップはお飾りとは言いませんが、短い時間の会合で行うのは事務方が詰めた内容を確認し、「これでよいのだね?」と双方のトップが合意するセレモニアルなイベントが一般的です。
トランプ氏のようにトップダウンで先に大方針をSNSなどを通じて公表し、部下が必死にその善後策を作っていくパタンは例外的プロセスといってよいでしょう。
今回、ウクライナとロシアの間には重要な問題がいくつもあり、その問題は過去、どれも微動だにしておらず、歩み寄っていないのが現実です。この中でゼレンスキー氏とプーチン氏が1時間なり2時間なり話をしても亀裂が深まるだけでしょう。
仮にプーチン氏がトランプ氏のメンツを考え、直接会合に出たとしてもプーチン氏がゼレンスキー氏に譲歩する可能性はほぼゼロだとみています。ゼロ回答が予想される中、ゼレンスキー氏が直接会合をする意味は欧州の連帯なのかもしれません。
以前も申し上げたと思うのですが、北米のプロアイスホッケーリーグの試合でしばしば殴り合いのけんかが起きます。観客はやんやの大歓声で双方、ヘルメットを飛ばしながらバカバカ殴り合いをします。レフェリーやチームメートはそれをとり囲むも事の成り行きを見守ります。レフェリーが止めに入るのはどちらかが倒れた時。つまり両者が立って殴っている限りいつまでもやるという暗黙のルールがあるのです。ケンカとは勝負がつくまでやる、これが私の理解です。
過去の戦争を見ても戦時中に双方のトップが停戦の話をすることはなかったと思います。イスラエルとハマスの場合もないのですが、ハマスが停戦に合意しているのはイスラエルが圧倒的に強いからでケンカにすらならないのであります。
ではウクライナ。和平交渉をいつやるか、という点においてウクライナと欧州は即時停戦で今すぐというスタンスに対してトランプ氏ははっきりとは言わないものの戦争が継続するもやむなしの中、早く和平交渉をすべし、という感じです。多分、プーチン氏にコンビンスされたのでしょう。
個人的にはゼレンスキー氏とプーチン氏では和平交渉は成立しないとみています。双方、和平が出来るならもっと早い段階でその機運はあったと思います。この2年、戦況に目覚ましい変化があったとは思えず、ホッケーでいう殴り合いが続いている、そんな状態です。最近、私はプーチン氏はこの戦争を急いでいないのではないか、と思い始めています。ゼレンスキー氏を真綿で絞めるようなそんな感じです。あるいは豊臣秀吉が城の水攻めをしたように時間をかけてじっくり攻める、そんな戦略に見えるのです。
ではプーチン氏の戦略は何処にあるのでしょうか?ずばり、ゼレンスキー氏が辞めるのを待っているとみています。故にロシアはゼレンスキー氏が交渉相手として正しいか疑問である、と繰り返し述べているのではないでしょうか?
もしも両国間で和平交渉が進むとすれば以前にも申し上げた通り、東部ウクライナを独立させる、というどちらの案にもない新提案が切り口として考えられると見ています。ウクライナが東部を独立させるならロシアに譲歩したという意識はやや薄れるでしょう。また独立国が間に入ればロシアとの緩衝地帯にはなりえます。
なぜ独立を考えるのか、といえば残念ながら同地域の支配民族はロシア人なのであります。国家は日本など一部の国を除き、常に民族問題を抱えています。ウクライナは民族構成的に西側と東側ではかなり違うわけで今回の戦争の根本原因であります。欧州では民族問題から小国家の独立はかなりの数で起きており、これは欧州の和平を維持するには歴史的にもっとも理にかなうやり方の一つであると考えています。
もちろん、このような発想はぶっ飛んでいるので誰も言い出さないでしょう。ですが、案外、数少ない解決策の一つのような気がします。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年8月20日の記事より転載させていただきました。