海外移住に心動かされない理由

Dmytro Chernykov/iStock

経営者の方が集まる会食で来年からドバイに移住する方にお会いしました。国内で経営している会社はご子息に引き継ぎ、新しいチャレンジをされるようです。

このように、ドバイやシンガポールなどの海外に移住をする日本人を周りにちらほら見かけますが、私自身は東京以外に移住するつもりはありません。

移住の目的としては、仕事上のメリット、節税目的、子供の教育、移住先に対する憧れなどが考えられます。

仕事上のメリットで拠点を変えるのは現役世代であればあり得る選択肢だと思います。

取引先との関係や人材の獲得、インフラなどの優れた拠点を探すのは、ビジネスの成功を高めてくれるかもしれません。

ただ、私の場合は東京で仕事をするのが最も効率的なので、移住する理由にはなりません。

節税も移住の理由としてはあまり魅力的に感じません。税金のために自分の好きなライフスタイルを犠牲にするのは本末転倒な気がするからです。税金が安いからといって、そんなに住みたくもない場所に無理をして住もうとは思いません。

また、シンガポールやマレーシアには、教育目的で移住される方が多いと聞いています。これも私には子供がいないのでこれも関係ありません。

憧れの地としては、アメリカのハワイやニューヨーク、欧州のロンドンやフィレンツェといった街には住んでみたい気もします。

実は30年以上前にボストンに住んでいたことがあります。当時を思い出すと確かに日本と異なる文化に触れるのは楽しく刺激的でしたが、やはり日本食や日本文化が恋しくなることが多かった記憶があります。

年齢を重ね当時よりもその感情がより強くなっているのではないかと思い、憧れだけで長期間移住するのはやめたほうが良い気がしています。

東京が完璧な街とは思いません。夏の蒸し暑い気候は不快ですし、人の多さもストレスです。

しかし、治安の良さと物価の安さ、そして何より充実した食生活は他では得られないものです。

昔ながらの居酒屋に入って、黒ホッピーともつ焼焼きや煮込を食べる(写真)。そんな時東京に住んで本当によかったとしみじみ思います。

だから東京を脱出するのは、温暖化がこれ以上進んで気候的に住めなくなるか、有事で東京に住めなくなることくらいしか今のところ考えていません。そんな未来が来ないことを祈っています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年8月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。