人を吸収し、圧倒的財務力で独り勝ちの東京都は天国か?

クマも恐ろしいですが、マダニも嫌な相手になってきました。こんな虫も昔はなかったのに2011年頃からぽつぽつ増えてきたようです。中国から来たともされますが、国立感染症研究所の調査では日本独自の変化を遂げたようです。先日はカナダでも発見されたと当地のメディアが報じています。家にいるダニとは違い、草木の中で動物感染も多く、致死率は15%程度。物流や野鳥、犬猫を含む動物が感染方法とされます。環境は常に変化していると考えるべきなのでしょう。とすればヒトは対処療法に頼るのが良いのか、免疫を作れる体質を育むべきか、私は後者だと思うのですが、日本の医療の考え方にはそれはあまりないように思えます。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

行き詰まるのか、北米の経済政策

ジャクソンホール会議でパウエル議長のスピーチがありました。アメリカの株価は爆上げしましたが、どちらかといえば今週、このイベントのために数日間、株価が方向性を失っていたので「予定消化」で「霧が晴れた」状態だと言えます。ではパウエル氏は利下げを暗示したかと言えば私が英語のニュースを読み解く限りそうではないと思います。つまり「頑なさ」を取り除き、スクエアに構えたというものです。ただパウエル氏は雇用への懸念を示しており、昨日申し上げたように9月5日の雇用統計が弱々しいものになれば利下げの確率は限りなく100%に近づくとみています。

パウエル氏は2つの問題の狭間にいます。「関税で上がるかもしれないインフレ率」と「就労者の需要も供給も減っている事実」であります。この2つは二律背反しています。物価の上昇は良い上昇と悪い上昇がありますが、今回は人為的上昇で悪い上昇であります。では労働市場が不活発とはどういうことか、といえば一生懸命働き、物価高に立ち向かうという姿勢が見えないとも言えます。そんなはずはないわけで多分、外国人労働者が減少している公算が高く、そこをアメリカ人労働者で埋められないのだとみています。

カナダも似たような外国人締め出し政策をしており、労働市場がタイトになるはずですが、それでも失業率は改善せず、大学を卒業しても就職できずという問題を抱えています。北米は移民による経済活性化が原動力であっただけにその基本ポリシーを転換したトランプ氏とカナダのトルドー前首相は北米経済の根幹にタッチしたとも言えるかもしれません。両国とも教育や生活レベルが大きく向上し、エントリーレベルの仕事は自分たちの仕事ではないという意識を強くしました。社会で底辺の仕事を誰がするのか、そこに焦点を当てていない今の政策は必ず、どこかで壁にぶち当たると見ています。

日本はアフリカと絆を結べるか?

日本が主導する第9回アフリカ開発会議が横浜で開催されました。これは1993年に始まった日本とアフリカの包括的な連携を探る会議で現在は3年に一度開催されています。細川首相(当時)が始めたもので着眼としては素晴らしいと思います。一方で、官主導で民がまだついて行っていないような気がします。もちろん、日本企業や日本人のアフリカでの活躍も時折目にしますが、まだまだという感じがします。

官主導になりやすいのは中国が「一帯一路」の一環でアフリカへのインフラなどを中心とした投資が進むことへの対抗意識があるのは事実でしょう。日本と中国による新興国への投資や支援はライバル関係といってもよく、東南アジアでは日本が苦い思いを何度もしてきています。一方、中国が先行した投資案件では現地から厳しい批判が出た案件も数多いのが事実です。完成しないインフラ、借金の罠、労働者が中国から大挙してくるなど現地の人の評判が悪いものも数多くあります。ただし、政府同士のディールで決まるので民の声などお構いなしということでしょう。

では日本の民間企業が今、アフリカまで手を出せる余力があるか、と言えばこれには疑問符が付きます。私は「街は西に動く」という発想を信じているので次はインドの時代になるはずでこの栄華は20年程度は続くはずです。その次がどこか、中東なのか、アフリカなのかが判断できず、いずれにせよそれらの国が繁栄するには今から50年かかるとみています。スズキ自動車がインドに早くから投資をしてインドにすっかり溶け込んだケースを考えれば目先の果実よりも種まきできる高い目的意識を持つ人や企業を見つけ出せるのか、ここが肝だろうと思います。

東京都は天国

東京は人を吸収し、圧倒的財務力で独り勝ちの様相を呈している、というのはおおかた同意いただけると思います。もちろん東京に住むとなれば不動産は高いです。ですが、食品は競争が激しいため地方との差はほとんどなく、沖縄の方が高いという統計すらあります。インフラが整備され、便利さでは他県を圧倒しており、必要なものに手が届きやすいという点では仮に高い不動産というマイナス点を考えても人々は東京というブラックホールならぬ「小池ホール」に吸い取られるようなものだと思っています。

特に昔から思うのは高齢者への厚遇ぶり。例えば70歳以上にはシルバーパスがあり、住民税を払っているかどうかでパスは年間1000円か20510円の二択(区によって金額は相違)で都バス、都営地下鉄などが乗り放題になります。他の道府県にもありますが、条件はベストだと思います。この夏、小池氏は「夏の4か月の水道代、基本料金をタダにします」と宣言。これができるのは東京都水道局が自分の影響力下にあるからという趣旨の説明をしています。基本料金4か月分で5000円ぐらい。更にここに来て65歳以上のご家庭のエアコンの新設、買い替えは8万円補助を打ち出しました。マジか!と私はため息すら出ます。

東京に生まれ育った者としては東京の便利さは実感しています。私が東京に行くとき、普段行っているエクササイズを区が運営するジムでやっています。1回400円、プールもサウナもあります。誰でも使えるし、あちらこちらにあるところが太っ腹だなと思います。47都道府県を47の会社だと置き換え、好きなところを選んでくださいと言われたら東京を選ぶ人は多いでしょう。それは資金力とインフラ、サービス力は大手にはかなわないというごく普通のビジネス観点から考えても当たり前なのであります。

CHUNYIP WONG/iStock

後記
日本の大学からインターンシップの学生を2週間受け入れている最中です。今年もなかなか気骨があって積極的に外の世界に向かっていく学生で一緒に過ごしている時間でも年齢差を忘れられるほどいろいろな会話をしています。私のインターンシッププログラムは2週間のうち半分以上が他社への一日派遣。つまりインターンシップのインターンシップなのですが、海外でいろいろな人がいろいろな仕事をしているのを経験し、様々な視点から経験値を積み上げるというのが私の独特のプログラム。なかなか厳しいですが、昨年来た学生は理事長報告会(永守重信氏です!)に選出され、私は今年も狙っています。私には何のメリットもないけれど学生が良い経験を持ってくれれば私はそれだけで嬉しいです、はい。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年8月23日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。