三菱商事撤退が示す洋上風力発電の大き過ぎる欠陥:補助金ありきの再エネ政策の限界

三菱商事は、秋田県と千葉県の沖合で計画していた洋上風力発電事業3件からの撤退を正式に発表しました。建設費が当初見込みの2倍以上に膨らみ、事業収入を上回る支出が見込まれることが最大の理由です。中西社長は「断腸の思い」と述べ、地元や関係者に謝罪しました。

この撤退は、政府が再生可能エネルギーの柱として後押ししてきた大型プロジェクトの見直しであり、国のエネルギー政策に大きな影響を与えると見られます。秋田県や千葉県の知事は「極めて遺憾」と表明し、地元企業や漁業関係者からも困惑の声が上がっています。

洋上風力は大規模導入に適した電源と期待されてきましたが、日本は欧州と比べて風力条件が劣り、深海が多いという地理的制約を抱えています。今回の撤退は、日本での洋上風力本格導入を象徴する案件であっただけに、その影響は深刻と指摘されていますが、そもそも再エネ政策自体に無理がありました。

一方で「洋上風力が頓挫するなら原子力しかない」との見方も強まり、原子力推進への政治的覚悟が問われています。無謀ともいえる低価格入札を認めた経産省への批判も高まり、補助金制度や経済性評価の在り方を見直すべきだとの議論も出ています。

経済産業大臣も「洋上風力全体の信頼を揺るがしかねない」と懸念を表明しており、政府は再公募を含めた対応を検討しています。しかし今回の撤退は、あまりに出鱈目だった再生可能エネルギー拡大戦略の転換点となる可能性が高く、今後のエネルギー政策の正常化が注目されます。

洋上風力発電 資源エネルギー庁HPより