『金融とメディア、ITが融合する日』刊行にあたって

2018年11月に刊行された拙著『これから仮想通貨の大躍進が始まる!』(SBクリエイティブ)の中で、「仮想通貨の市場規模は、10年後には2000兆円程度に膨らんでいる」と想定しました。

この想定は、刊行時よりも実現可能性が高まっていると考えています。

当時の暗号資産市場全体の時価総額は約30兆円でした。

そして、2025年7月中旬時点では、約560兆円にまで上昇しています(日本では2020年に施行された『改正資金決済法』で「仮想通貨」から「暗号資産」へと呼称が変更されています)。

2018年の私の想定は、2028年後半に時価総額2000兆円程度に達するということですから、2025年からあと3年程度で、現在の時価総額がさらに4倍になるという計算です。

時価総額が大きく市場を牽引する『ビットコイン』『イーサリアム』『XRP』といった暗号資産の価格は、今後さらに上昇していきます。

たとえば、『XRP』の価格は2025年7月中旬時点で500円を超え、円換算では直近1年間で見ても6倍以上に上昇しています。

加えて、本書で詳しく解説する『ステーブルコイン』が世界中で流通するようになれば、あっさりと2000兆円を超えていくでしょう。

もちろん、日本をはじめ、世界の国々の暗号資産に関連する制度の改正、規制の緩和などが前提にはなりますが、それも時間の問題です。

ただ、この7年間で、私の興味の中心はもっと大きな事象に移りつつあります。

それは、「デジタルスペース生態系」です。

この言葉は私の造語ですが、メディア、IT、金融の融合は、このデジタルスペース生態系の中で完成します。

「デジタルスペース」というと、「仮想空間」や「バーチャルスペース」などを連想する人が多いかもしれません。

しかし、デジタルスペース生態系というのは、仮想空間を包括する、もっと上位の概念です。

その全体像について、もう少し説明を加えておくと、デジタルスペース生態系は、たんなる仮想空間ではなく、「リアルとデジタルが融合した経済圏」ということができます。

ブロックチェーン、DLT(分散型台帳技術)、AI(人工知能)、Web3、メタバース、フィンテック、ITなど、あらゆるデジタル技術が包括的に組み合わされ、金融だけでなく、不動産・医療・物流・人材・教育・エンターテイメント・メディアなどの多種多様な事業領域が、リアルとデジタルでシームレスに結びつくのです。

デジタルスペース生態系では、リアル世界の証券や不動産といった資産と、デジタル空間のセキュリティ・トークンやNFTとの間に境界がなくなり、リアル資産とデジタル資産の相互交換が可能になります。

こうしたデジタルスペース生態系では、ステーブルコインをはじめとする暗号資産が決済通貨として、縦横無尽に駆け巡ることになるでしょう。

インターネットの登場によって、社会は大きく変わりました。

デジタルスペース生態系の実現が世界に及ぼすインパクトは、それに比肩するものです。もしかしたら、それ以上かもしれません。

また、インターネットによる〝革命〟では、道半ばとなっている、本当の意味での「消費者主権の確立」や「顧客中心市場の誕生」が達成されることになります。

これは、けっして遠い世界の話ではありません。

すでに、実現に向けての歩みは、着々と進んでいます。

本書は、その最初のガイドブックになるはずです。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2025年8月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。