トランプ大統領は最近、大統領令を発布し、米国防省(Department of Defense)の名称を「戦争省(Department of War)」へと変更する方針を明らかにしました。これにより、国防長官の呼称も「戦争長官」へと改められ、すでにヘグセス長官のオフィスドアには新たな名称が掲げられているとのことです。
FIRST ON FOX: President Trump will sign an executive order Friday to alter the name of the Department of Defense to the Department of War — reverting to the agency’s former namesake, FOX News Digital has learned. Defense Secretary @PeteHegseth will also be referred to as the… pic.twitter.com/3NysjrwyMD
— Fox News (@FoxNews) September 4, 2025
トランプ大統領は金曜日に、国防総省の名称を戦争省に変更する大統領令に署名する予定です。これは同省の以前の名称に戻すもので、FOX News Digitalが入手した情報によると、国防長官@PeteHegsethは「戦争長官」と呼ばれることになります。
この呼称変更には、単なる言葉の置き換え以上の意味が込められています。トランプ氏は、国防省という名称が採用された背景には、米国がかつて弱体化していたことがあると考えているようです。そして、ヘグセス戦争長官は「戦士精神」を軍に根付かせ、「殺傷能力」の高い軍隊を育成するためには、まずは形から入る必要があると主張しています。
Trump: "We decided to go woke and we changed the name to Department of Defense. So we're going to Department of War … I think it's a much more appropriate name especially in light of where the world is right now." pic.twitter.com/PdIy47i7WN
— Aaron Rupar (@atrupar) September 5, 2025
トランプ:「我々はウォークになることを決め、名前を国防総省に変更した。だから我々は戦争省に戻す…特に今の世の中の状況を考えると、ずっと適切な名前だと思う。」
Hegseth: "Maximum lethality — not tepid legality. Violent effect, not politically correct. We're gonna raise up warriors. Not just defenders." pic.twitter.com/pWi5qTAdz2
— Aaron Rupar (@atrupar) September 5, 2025
ヘグセス:「最大の殺傷力――生ぬるい合法性ではない。暴力的な効果、ポリティカリー・コレクトではない。我々は戦士を育てる。ただの防御者ではない。」
軍隊の本質を考えると、「戦争省」への名称変更は突飛なものではありません。戦争理論の古典として知られるクラウゼヴィッツの『戦争論』では、戦争の本質は政治的なものであり、その指導は政治家によってなされるべきだと説かれています。軍人の役割は、文民から命じられた政治的目標を達成するために軍事力を行使することであり、効率的に任務を遂行することが求められます。

ヘグセス「戦争長官」とトランプ大統領 ホワイトハウスHPより
この観点からすれば、軍は「戦う」ことに集中し、政治が「何を守るか」という国防の目標を策定するという役割分担は、合理的であると言えるでしょう。
なぜ軍人ではなく、政治家が戦争を指導すべきなのか?
戦争を政治の道具と定式化したクラウゼヴィッツの研究が今でも評価されている理由の一つは、文民統制の根拠となっているためです。
彼によれば、戦争指導は政治家の責任であり、軍人の責任ではありません。1/https://t.co/EiB2BKmsNn— 武内和人/Takeuchi Kazuto (@Kazuto_Takeuchi) May 27, 2022
しかし、米軍が本格的に「戦える」軍隊へと変貌するためには、いくつかの障壁を乗り越える必要があります。
まず、米国の軍需産業の製造基盤が衰退している点が挙げられます。現在、他国向けのみならず、自国向けの兵器でさえ、必要なタイミングで十分な量を生産することが困難な状況にあります。この問題は、過去の日米関税交渉の場でも取り上げられていました。
米国の軍需産業力は衰退、中国は急成長
中国メーカーの多くは軍需産業には分類されないが、戦時には武器製造や支援を目的とする業態にすぐ転換できる。https://t.co/xNom4r5l2c
— ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 (@WSJJapan) June 16, 2025
さらに、米軍をどの目的で、どのように運用するのかという優先順位が明確ではありません。トランプ政権は、不法移民や麻薬カルテルから米国本土を守ることを最重要課題と位置づけており、最近ではベネズエラの麻薬組織に対して軍事力を行使する方針を打ち出しています。
しかし、麻薬組織との戦いと、中国やロシアといった軍事大国との戦争では、必要とされる軍事戦略や装備体系が大きく異なります。前者に過度に集中すれば、後者への抑止力が不十分となり、その逆もまた然りです。
いよいよ全貌が明らかに?やはりトランプ大統領は米中ディールの余地を残して、本土防衛にシフトか?◼︎トランプ政権の国防戦略、対中抑止後退か 「本土防衛優先」と米報道(毎日新聞)#Yahooニュース
https://t.co/Com5hGdw3D— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) September 6, 2025
米軍によるベネズエラの「麻薬密輸」ボート攻撃で11人死亡、トランプ氏が動画投稿(字幕・4日)https://t.co/Z3V0z9Dd5T pic.twitter.com/rldkkgpbCL
— ロイター (@ReutersJapan) September 4, 2025
「戦争省」への名称変更は、米軍のアイデンティティを再定義する試みであり、軍事力の本質に立ち返る動きとも言えます。しかし、名称だけで軍隊が強くなるわけではありません。製造基盤の整備、戦略の明確化、そして政治と軍事の役割分担の再構築が伴ってこそ、米軍は真に「戦える」軍隊へと進化できるのではないでしょうか。






