自動車関税15%に引き下げも「80兆円投資覚書」に潜むリスク

赤沢亮正経済再生担当大臣は訪問先のワシントンでラトニック商務長官と会談し、日米合意に基づく投資に関する覚書に署名しました。トランプ大統領は自動車関税を27.5%から15%に引き下げ、相互関税の適用を修正する大統領令に署名し、2週間以内に発効する見通しが示されました。

一方で、大統領令には、米国産コメの輸入をミニマムアクセス枠で75%増やすことや、農産品の年間80億ドル規模の購入、LNGや航空機、防衛装備品の調達増強などが盛り込まれました。投資覚書では、日本が半導体や医薬品、AIなどに5500億ドル(約80兆円)を米国へ投資し、投資先は米政府が選定するとしています。

赤沢大臣は「合意の着実な実施を歓迎する」と述べ、石破総理からの親書をトランプ大統領に伝えました。米側も「歴史的な合意」と評価していますが、自動車業界からは依然として高い関税負担や不透明さに懸念が出されています。赤沢大臣は決着がついていないと協議の継続に意欲を示しています。

しかし、80兆円の投資については、日本に不利で米国に有利すぎるとの批判が強まっています。投資案件はトランプ大統領が選定するため、日本側はリスクを把握できず、失敗すれば巨額損失を負う危険があります。アラスカのガス田開発に6兆円を拠出する構想などもあり、損失が発生した場合の責任や利益分配の透明性が不十分です。

米国内ではトランプ関税を違法とする司法判断が出ており、最高裁判決を前に関税合意を既成事実化する動きがあるとみられるため、日本が拙速に加担すべきではありません。

今のところ国民への十分な説明がなく、石破首相や赤沢大臣には説明責任が強く求められます。

石破首相と赤沢経済再生担当大臣 首相官邸HPより