こんにちは、自由主義研究所の藤丸です。
今回は「初心者のための経済学シリーズ」の第8回目「進歩主義とは何か?」です。
経済を考えるうえで、基本となるキーワードについて説明するこのシリーズも、あと残り1回となりました。
※ アメリカの自由主義系シンクタンク「ミーゼス研究所」の動画シリーズが元案となっています。アニメーション動画も日本語テロップ&音声にしていますので、こちらもぜひ御覧ください。
進歩主義とは何か?
経済学はいわゆる「価値中立的な科学」であり、政治やイデオロギーを考慮せずに問いに答える学問です。
優れた経済学者は、自由市場の利点や社会主義の帰結を説明できます。
政治的な偏見からではなく、「限られた資源」の世界での人々の反応に基づいて説明できるのです。
しかし、経済学について議論する際、私たちはしばしば政治的文脈の中で議論します。
たとえば、選挙期間中や、増税が地域経済に与える影響についての議論です。
なかには「進歩主義者」と自称する人もいます。
これは、彼らの政治的・経済的見解が「現代的」または「未来志向」であることを示唆しています。
アメリカの歴史を通じて、「進歩主義者」は資本主義と社会主義の間の「第三の道」を掲げる経済システムを推進してきました。
彼らは、政治家や自由市場ではなく、「専門家によって規制された経済」を提唱しています。
資本主義と社会主義の間の「第三の道」を掲げる進歩主義者
しかし、これには「進歩的」な点は全くありません。
この政府体制は、「政府が市場よりも優れている」という誤った信念である「縁故主義」と同じ問題を抱えています。
市場は、資源と製品の「供給と需要」を調整することで機能します。
価格のおかげで、起業家、経営者、そして消費者は、自分の目的を達成する最良の方法を計算できるのです。
進歩主義者は、個人がこれらの決定を自分で行うことを信じていません。
その代わりに進歩主義者は、市場と価格が「専門家」によって規制されることを望んでいます。
これらの専門家は、人々が欲しがる商品やサービスを生み出す生産者からではなく、大学や政治家から影響を受けているのです。
進歩主義者が犯す根本的な誤りは、「十分な専門教育を受ければ、市場がもたらす知識よりも優れた知識を得ることができる」と信じていることです。
こうして進歩主義者たちは、社会の支配を強化するために、政治と立法の権力の拡大を正当化します。
これは危険です。
この政府の介入が単純な政治的腐敗の産物なのか、または「専門家による規制」として売り込まれているかは経済的には関係ありません。
結果は同じです。
市場システムは、実際の消費者の利益のためではなく、政治的目的のために、政府の強制力によって操作されてしまいます。
これは資本主義と社会主義の「第三の道」を提供するのではありません。
むしろ、より多くの国家権力を正当化するために、資本主義を弱体化させるものです。
縁故主義と同様に、この「第三の道」の恩恵を受けるのは、有用な貢献をする起業家や生産者ではありません。
最終的に支配権を握ることになる政治の「専門家」、つまり非生産者なのです。
第三の道という政府の介入は、税制優遇措置、製品規制、業界標準の強制、ロビイングなどを通じて大企業に利益をもたらし、小規模企業は競争が困難になります。
こうして、政府から与えられた不当な優位性により、大手の国内企業や多国籍企業は、市場と立法機関の両方で勝利を収めます。
進歩主義者の「専門家階級」は、市場や選挙によって責任を問われることなく経済に大きな影響力を及ぼす官僚を台頭させ、新たな問題を生み出しています。
進歩主義者の政府政策が1世紀にわたって続いた結果、現在のアメリカでは、選挙の結果に関わらず、規制機関と大手企業の間で人材が移動する「回転ドア」現象が生まれています。
いかなる説明責任も果たさないまま、金融危機、医療費や学生ローンの高騰、あるいは「公衆衛生」の名の下に経済封鎖するといった、政策の大失敗がもたらされました。
これらは自由市場の産物ではなく、長年にわたる介入政策の失敗の直接的な結果です。
経済には「第三の道」はありません。
消費者が経済を主導するか、政府が支配するか、どちらかです。
経済学は、特定の専門家に社会を管理する力を与える科学ではありません。
むしろ、世界の繁栄をもたらすために政府ができることの限界を教えてくれるものです。
進歩主義は解決策ではありません。
「経済学者のように考える」ということを学べば学ぶほど、真に自由な社会の価値を理解するようになります。
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最後までお読みくださりありがとうございました。
次回で、この「初心者のための経済学シリーズ」は最終回になります。最後まで読んでいただけると幸いです。
編集部より:この記事は自由主義研究所のnote 2025年9月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は自由主義研究所のnoteをご覧ください。