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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。なにもないところから資格を使ってどう稼ぐのか? 資格を取ることで人生を逆転させた、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』から、再構成してお届けします。
目指すはフリーランス型の資格、「稼げる資格を選ぶ」は間違い
資格のガイドなどを見ると、「資格取得者の平均年収」などが書かれています。実は、これが多くの人の資格選択基準を狂わせてしまっています。これにはカラクリがありますので、ここで分析してみましょう。
まず企業に勤めている人で資格取得者の年収事例。これはまったく当てになりません。たしかにSEなど、業界によって技術があれば、高給を取れる場合もありますが、多くの場合は「その事例の人が勤めている会社の例」であって、あなたの就職・転職活動、そしてフリーランス活動には直接は関係ありません。あくまで目安です。気休めといってもいいでしょう。
次にフリーランスの事例の収入。これも当てになりません。目安にはなりますが、フリーランスの収入は個人の努力によって決まります。ですから、DTPエキスパートの資格を持ったフリーのデザイナーが年収500万円稼いでいるという事例があっても、あなたに年収500万円の保証をしてくれるわけではありませんし、また500万円しか稼げないわけでもないのです。
資格の選び方のポイントは、「自分のやりたいこと」から見つけること。これが重要です。自分のやりたいことから探すわけですから、あなたにはこの資格がいいという断定はできません。
私にとって行政書士は最適な資格ですが、ほかの人にとっては最悪の資格になる可能性もあります。
資格選びの基準として、以下のポイントをあげておきますので、ぜひ参考にしてください。
選択ポイント1:自分自身がやりたいこととマッチした資格を選ぶ
ウェブデザインをしたいから、DTPエキスパート。システム開発の仕事をしたいから、ソフトウェア開発技術者――。当たり前のように聞こえますが、実際には逆に考えてしまう人がほとんどなのです。
「DTPエキスパートを取って何をしようか」「ソフトウェア開発技術者を取って何をしようか」だと、自分の方向性が見えていないことになります。あくまで、資格は自分がやりたいことを実現するための手段であることを再認識しましょう。
選択ポイント2:スキル資格とステータス資格を見極める
自分自身のやりたいことに、独占業務を持つ税理士などの資格、つまり「スキル資格」がどうしても必要ならば、その資格を取りにいきます。スキル資格はないとどうしようもないので、ここの見極めをしていきます。
これとは逆に、自分のやりたいことに必要そうな資格が、能力そのものを表す中小企業診断士などの「ステータス資格」だった場合には、その資格の実績を見ます。要は自己紹介のときに、信用を得られるかどうかということです。
そのステータス資格が公的・国家資格であれば、信頼度は十分であると考えていいでしょう。民間資格だった場合には、どのくらいの受験生がいて、どのくらいの実績があるかを調べます。
ただし、この調査はあくまで目安です。なぜかというと、ステータス資格を取る理由は、
(1)スキルアップ
(2)フリーとして活動したときに信頼を得やすくするため
この2点だからです。スキルアップについては、自分がその仕事をしていくわけですから当然として、問題は(2)をどう考えるかということです。それを次にお話しします。
選択ポイント3:ステータス資格の選び方
実際のところ、資格について多くの人が詳しいわけではありません。知らない人から見れば、行政書士も社会保険労務士も税理士もみな同じに見えます。
資格の難易度や内容について詳しく知っているのは、資格取得を目指す人とその資格の業界、あとは予備校くらいのものです。実際にフリーランスとして動いた場合には、「資格について知らない人」を相手にするわけですから、資格のレベルなんて実はそれほど重要ではないのです。
たとえば、「財団法人生涯学習開発財団の認定コーチ」と聞いてどう思いますか? 知っている人は別として、「どこかの団体が認めたコーチなんだろう。なんとなくすごい」という感想を持つのが一般的ではないでしょうか。
わからない資格を聞いたときに、その資格の実績や取得人数などを根掘り葉掘り聞く人のほうが少数派のはずです。
つまり、ステータス資格を選ぶ場合の基準としては、
(1)自分がやりたいことの分野にマッチしているか
(2)自分のスキルアップのために本当に必要かどうか
(3)自分の能力の証明としてふさわしいか
この3点が重要になってきます。
資格の難易度や歴史についてなどは、ほとんどの人が知りませんので、この3点にのみ絞って考えてみてください。ステータス資格の内容はあまり知られていないことが多いのですが、あまりにも信頼性のない資格では、その証明になりえません。最低限その調査はするようにしましょう。
そして、なにより大切なのが「資格を持っていること」ではなく、「自分は何ができるか」「資格の信用に見合った仕事ができるか」のほうです。自分を軸に考えることをつねに意識しましょう。
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
士業専門の経営コンサルタント。2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、のべ全国3,000名以上の士業から相談を受け、相談件数は優に2万件を超える。主な著作に『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業BIBLE』(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。最新刊『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。
X(旧Twitter) : @yokosuka_ai
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年6月20日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。







