厚労省が失業保険の保険料を「リスキリング休暇」給付金に流用

政府は10月から、雇用保険に加入する労働者が30日以上の無給休暇を取得してリスキリングに取り組む場合、賃金の一部を「教育訓練休暇給付金」として支給する新制度を始めます。対象は加入5年以上の会社員やパートで、最大150日分が支給されます。

参照リンク:リスキリング休暇に給付金 最長150日、長期の学びも支援 日本経済新聞

しかし、この仕組みには大きな問題があります。本来「失業保障」を目的とする雇用保険料を、リスキリング休暇という名目で流用することは、制度の趣旨から逸脱しているとの指摘があります。実際には、学生数減少に苦しむ大学や専門学校への迂回的な補助金となる恐れもあります。国民が払った保険料を政治が都合よく使い回しているように映りかねません。

企業側も課題を抱えています。多くの会社には教育訓練休暇制度が存在せず、導入予定もありません。代替要員の確保が難しく、長期休暇を認めにくいのが実情です。理念先行の制度で、現場に定着するかは不透明です。

制度の狙いは、AI時代のスキル獲得を促し労働者の「市場価値」を高めることにあるとのことですが、給付金と教育効果が直結するわけではなく、果たして本当に雇用安定につながるかは疑問が残ります。結果として、制度は国民負担を増やしつつ、実効性が乏しい“形だけの改革”に終わる懸念が強いといえます。

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