「日本の石破茂首相が7日、党内外の圧力を受け、辞任の意思を表明した」というニュースは驚かなかったが、残念だった。石破首相を支援してきたからではない。日本の政治が昔のイタリアの政界のように、トップが短期間に交代する状況はやはり好ましくはないと考えるからだ。3度の国政レベルでの選挙で敗北したのだから、石破首相への退陣要求が高まることは理解できる。政治家にとって選挙に強いトップを願う。選挙の度に得票率を落とすような指導者の下では落ち着いて政治はできないからだ。

辞任表明する石破茂首相 2025年9月7日 首相府公式サイトから
日本の永田町の政情に疎い当方は詳細な政界解説はできない。ただ、欧州のアルプスの小国に居住する日本人として石破首相辞任表明で感じたことを少しまとめてみた。
石破さんは数少ないプロテスタント派のクリスチャン首相だ。カトリック教徒の麻生太郎元首相とは異なったタイプのキリスト者という印象を持っている。ただ、首相就任直後から、防衛長官時代に感じていた行動力のある強い政治家というイメージは感じなかった。首相のポストを目指しながら長い期間、与党内野党のような立場で苦労され過ぎたからかもしれない。長い間、待ち続けると、最初の決意、信条は変容していく、という教訓だろうか。
日本では既に誰が次期自民党総裁になるかに話題が移っているが、石破さんの辞任表明の記者会見を見ながら感じたことがある。石破さんにも歴史に名を遺すチャンスはあったのではないか、ということだ。石破さんは一年にも満たない在位期間での実績を並べながら語っていたが、繰り返すが、石破さんにも神は大きなチャンスを与えていたのではないか。
石破さんは辞任を決意した理由を、日米関税協議がまとまったこと、党内の辞任要求を受け、自民党の分裂という最悪のケースを回避するために、別の指導者に総裁ポストを委ねることを決めた、と説明していた。その通りかもしれないが、当方は全く別の観点から首相の辞任表明を受け取った。
以下は当方の推測だ。
石破さんは前夜、夢を見た。そこで神は石破さんに辞任を促したのではないか。ただ、石破さんは辞任表明で「神の願いに基づいて・・」とは言えなかった。
石破さんが全国民が観ている記者会見で「私は前夜、夢を見ました。そこで神が現れ、茂よ、もう辞任すべきだと諭されました。まだやり残したテーマがありますが、その声に従い,今回辞任表明となりました」と語ったならばどうか。
日本の記者たちの反応は分からないが、ロイター通信やAP通信など外国通信社の記者たちは直ぐに「日本のクリスチャン首相が神の声を聞き、辞任を決意した」という速報を世界に流すだろう。日本の記者たちは石破さんの話を理解できないかもしれないが、欧米記者たちはその発言の意味とインパクトが分かるから、石破さんの発言を大きく発信すること請け合いだ。
トランプ米大統領を含め、世界では「日本の石破茂首相」と言ってもピンとこない人が多いが、「神が辞任を諭した日本の首相」として石破茂首相の名前は世界の人々の心をつかむだろう。石破さんの名前は世界に広がるだろう。神が直接、夢に現れ、その言動を指図する政治家は多くはいない。石破茂首相はその稀な選ばれた政治家の仲間入りができたのだ。
神は昔も今も「夢」を通じて様々な内容を伝達してきた。例えば、ペルシャ時代、クロス王はBC538年、夢を見て、捕虜のユダヤ人を解放している。自由を得たユダヤ人はエルサレムに戻ってユダヤ教の経典をまとめる。それによって、ユダヤ教は宗教としてスタートしていく。
教会の日曜日学校で教師を務めたこともある石破さんはキリスト系メディアとのインタビューの中で、「防衛長官時代、自衛隊のイラク派遣を決めた時、キリスト信者たちから激しい批判の声が上がった。同じ信仰をもつキリスト信者からの批判が一番つらかった」と語っている。首相には「御心ならば、わが身をお使い下さい」(地の塩となれるように)という強い信念があるという。
いずれにしても、石破さんが前夜、夢を見たか、その夢に神が現れたかは本人が証をしない限り、分からない。だから、上記の話は夢事に過ぎないと一蹴はできないだろう。当方が伝えたかったことは、石破さんにも歴史に名を遺すチャンスがあった、という点だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年9月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






