経産省が物価上昇対策で「社食補助」拡大を検討:ランチの経費化は適切なのか?

政府は物価上昇に対応するため、補助金や公的制度の価格を見直す方針を進めています。2026年度に向け、各省庁は長年据え置かれてきた制度価格の引き上げを求めており、全体の7割ほどが対象になる見通しです。その一つとして、社員食堂の食事補助に関する税制優遇枠の拡大も検討されています。

参照リンク:「社食補助」拡大を議論へ 非課税限度額40年超据え置き―税制改正 時事ドットコム

「社食補助」拡大を議論へ 非課税限度額40年超据え置き―税制改正:時事ドットコム
社員食堂に代表される「食事補助」への税優遇を拡大する機運が高まっている。経済産業省は2026年度税制改正で、従業員1人当たり月額3500円に40年超据え置かれている非課税限度額引き上げを要望した。物価高が続く中、食事に絡む税負担の軽減は身近なテーマだけに、年末に向けた税制改正論議の行方が注目される。

現在の制度では、企業の食事補助が月3500円以下で、従業員が半額以上を負担する場合に非課税とされていますが、この基準は1984年から見直されていません。物価高を受け、経済団体や外食業界が上限引き上げを要望し、政府も「骨太の方針」に速やかな見直しを明記しました。

しかし、この政策には大きな矛盾と問題点をはらんでいます。フリンジ・ベネフィット(企業が従業員に対して給与・賞与とは別に提供する経済的利益のこと)を課税対象とせずに放置し続ければ、税の大原則である公平性の歪みが大きくなってしまいます。

サラリーマン間でも不公平が生じ、個人事業主などへの配慮も欠けています。社員食堂を持つのは大企業が中心で、中小・零細企業や非正規の社員は恩恵を受けられないことが考えられることから、ランチ代補助は再分配政策としても不適切で、チケット導入には事務コストやシステム管理費がかかり、税金投入の合理性もありません。

社員食堂の補助自体が疑問視されていますが、「社食がない人にはチケットを配ればいい」といった発言をする政治家も現れ、これに対しては利権を広げるだけだとの批判もあがっています。これでは特定のサービスを強制的に利用させる利益誘導だと思われても仕方がありません。政府の「歳出削減」はますます説得力を損なってしまっています。

SetsukoN/iStock