黒坂岳央です。
筆者は20代の頃から、「40代の勉強法」「40代の生き方」といった類の本を熱心に読み漁っていた。また、ネット掲示板やSNSでも「40代になるときつい」「中年期は苦しい」といった書き込みを頻繁に目にしていた。今でも「人生の先輩が若者に送る忠告」として「中年になれば人生はハードになる」という意見をよく見かける。
結論から述べると、こうした言葉はあまり真に受けなくてよい。理由は、事前に備えをしっかりしていれば、中年期以降の人生は世間で言われているほど悲観的なものではなく、むしろ若い頃以上に豊かになり得るからである。実際、筆者自身は10代や20代の頃に比べて40代の今の方が圧倒的に楽しいと感じているし、世間で言われる「中年の不調」みたいな話は1つも当てはまらないからだ。
本稿は独断と偏見で構成される体験談に過ぎないが、あまりに世間で言われる「40代からは人生下り坂論」へ一石を投じる目的を持って書かれた。40代は絶望ではなく、むしろ人生の黄金時代だ。落ち込んでいてはもったいない。
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40代から不調になる
「40代になると体力が落ち、徹夜もできず、体のあちこちが痛む」とよく言われる。
しかし筆者は40歳を迎えてから毎日運動を習慣化し、さらにパーソナルトレーナーをつけて筋トレを継続している。その結果、体力の低下を感じたことはない。思春期の体力測定では常に下位に近く、20代も運動不足で体力に自信は皆無であったが、40代から改めて鍛え直したことで、10代の頃の自分を軽く上回れるほどになった。
「40代から体力がなくなる」の正体は、年齢ではなく長年の運動不足にすぎない。実際、厚労省の体力・運動能力調査でも、運動習慣のある中年層は若年層に匹敵する体力を維持できると示されている。
YouTubeやセミナーで視聴者からも「以前と比べて体つき変わりましたね」と何人からも言われるようになり、自分も非常に強くなったと感じる。
「40代からは体力がなくなる」というのは単に運動不足だからだ。肉体のピーク時から20年くらい運動不足が続けば、当然筋肉量も減ってしまうだろう。
40代から頭が悪くなる
「40代からは新しいことが億劫になる。記憶力が落ちる」と言われる。
筆者はそれを恐れて学びを継続してきたが、体感的にこの意見は誤りである。使い続けている限り、思考力や記憶力はむしろ洗練される。最近、勉強時間の目安が200時間の資格試験に挑戦したが、実際には40時間ほどの学習で一発合格できた。難関資格ではないため自慢などするつもりはまったくないが、20代の頃よりも効率的に学べたことは確かである。
これまでの人生で一度も勉強をしたことがない新たなる分野の勉強だったが、大変楽しく、平日毎日30分の勉強を3ヶ月ほど積み上げた。試験直前は普段以上に追い込みをしたものの、20代の時より記憶力が落ちたという感覚はまったくないし、むしろ自分は人より時間がかかるタイプで、試験も半分実力チェックのつもりだったので、まさか一発合格するとは思わなかったのだ。
脳科学の研究でも、知的活動を継続する人は認知機能の低下が遅いと報告されている。大学卒業から20年間勉強をしなければ衰えるのは当然であり、それを「加齢のせい」と誤解しているにすぎない。正しくは「使わないから錆びつく」のであって、年齢が原因ではない。
40代は人生がつまらなくなる
「人生は若い時しか面白くない、若い頃に遊んでおくべき」昔からこういう人が必ずといっていいほど若者にアドバイスしている。だが、これほど間違った意見はないと思っているし、これは下手をすると人生計画を狂わせる良くない洗脳だと思っている。
筆者は20代前半までニートやフリーターとして遊び尽くしたが、むしろそこで「受動的な遊びはすぐ飽きる」という限界も知った。現在は仕事も勉強も遊びも全力で取り組んでおり、20代の頃よりはるかに充実している。経済的な余裕が増え、自分の「楽しめるツボ」も把握できるようになったためである。
心理学や幸福学の研究でも、40代以降は自由度と裁量が増し、むしろ幸福度が高まる傾向があるとされている。人生がつまらなくなるのは年齢のせいではなく、自ら行動を止めてしまった結果にすぎない。
勉強も仕事も若い頃はいやいややっている人も多いだろうが、学生時代に嫌いだった勉強が40代から急に面白くなる人も少なくない。
10代、20代は下積み時期で自由もなく、人の目も気になるし、我慢することも多いので「人生が楽しいのは若い頃だけ」といわれると絶望する人も出てくる。実際にはそんなことはない。人生の黄金時代とはまだまだ体力も、経済力も余裕が出る40代だと思っている。
40代は自由がなくがんじがらめ
「40代は自由がなく、自分のやりたいことは何も出来ない」という意見は根強い。筆者もこの意見を真に受けていた時期もあった。
だが蓋を開ければむしろ、40代ほど自由な時期はない。実生活の面では子供がいると確かに独身の人より自由度は低くなるかもしれないが、「精神面」だけでいえば間違いなく40代は自由になる。
10代、20代の頃は知らず知らずのうちに周囲の視線に縛られてしまう。学校では「はみだしものになりたくない」と苦しみながら陽気なキャラを演じた人もいるだろう。だが40代になると「気の合う人とだけ付き合えればいい」という感覚になる。こうなると本当に楽である。
誰しも一度は若い頃に通る「見栄を張ってブランド物で身を固める」なんてつまらないことをしなくても良くなる。もちろん、相手に不快感や悪印象を与えない言動や見た目を整えることはマナーの範疇だが、相手の目線をいい意味で気にしなくなる。
◇
「40代から◯◯になる」という忠告は、多くの場合20代で停滞していた人の意見だ。運動を怠れば体力は落ち、勉強をやめれば頭は鈍り、行動を止めれば人生はつまらなくなる。これは厳密には加齢による避けられない宿命ではなく、単に習慣の問題だ。
むしろ40代は、体力も頭脳もまだ伸ばせる余地があり、経済的基盤や精神的自由度も増す。40代を「下り坂」とするか「黄金期」とするかは、自分の選択次第である。
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