
某社のハワイでの保養所の件が報じられているが
誰もが知るあの飲料品メーカーの会長が、違法な大麻成分を含む可能性のある商品を購入し、福岡県警の捜査を受けたことでその会長職を辞任。
それに伴い、前任のコンビニの社長時代の立ち振舞にまで報道が波及しています。
その一つに、ハワイのコンドミニアムでの女性に対するあまり品の良くない行為についての指摘も。
それよりも、税理士として気になるのは、そのコンドミニアムが、「購入当時約2億円で、社員のための保養所とされていながら、その取得の事実を知っているのは、社長の側近などのごく一部のみであった」ということです。
このような保養所の取得については、中小企業でも似たようなケースはあり、税務調査では指摘事項と言うか、これを調べるために税務調査が来たと思われるような事案も結構あります。
そこで、今回は、保養所の取得と税務調査について、まとめてみようと思います。
なぜ不動産の取得が税務調査の引き金になりやすいのか
税務調査が来た理由で最も多いのは「一定期間の間隔が開いたから」
つまり、事業規模の大小によってその間隔は異なるものの、時間が経てば税務調査は来るものなのです。
要するに、一定期間経過すれば、どの事業者でも税務調査が来る可能性はあるわけですが、前回の税務調査から一定期間が過ぎたうえで、なんらかの行為がされたことで、税務調査を招く引き金になることがあります。
それは、例えば、売上高の大幅な増加や減少などの変化、高額の退職金の支給など。
さらに、税務調査の引き金の一つとして、不動産の取得も挙げることができます。
では、なぜ、不動産の取得が税務調査の引き金になることがあるのか。
一つは、脱税をして隠された資金が、その運用先を求める中で、不動産の取得となって現れることが多いから。
もう一つは、不動産取得に関連する多額の費用の支払いについて、税務処理に誤りが見られることが多いから。
要するに、税務署としては、不動産の取得がされたというのは、税務調査に行くことで、追徴課税の余地が大きいタイミングだと判断しているからなのです。
保養所取得は社長の私物化との指摘も
不動産の取得の中でも、特に税務署に目をつけられやすいのが、会社でのリゾート施設の取得です。
その取得の目的は、「従業員の保養所」としてということなのでしょうが、現実には、社長やその親族しか使用していないケースも多いのです。
そうなると、このリゾート施設の取得は、社員への福利厚生目的などではなく、会社の資金で、社長がその資産の利用を可能にしたとして、経済的な利益が供与があったとされます。
このリゾート施設の取得が、会社から社長への経済的な利益の供与となれば、
1.その保養所取得に伴い損金算入されていた金額は、事業関連性がないとして法人税の追徴課税ができます。
2.その建物取得についても、課税売上獲得に係るものではないとして、仕入税額控除がされていた分について消費税の追徴課税ができます。
3.社長に対して、個人が利用した分についての経済的な利益について、所得税・住民税(法人に対する源泉所得税)の追徴課税もできるのです。
税務署としては、「一石三鳥」の追徴課税ができるのですから、そりゃ、「前回の税務調査からも期間も経っているし、これを機会に税務調査に行くか」ということになるわけです。
強硬な税務署員の中には、その行為を「社長個人の私物を会社名義に仮装した」として、購入費用全額を社長に対する賞与とした上で、重加算税の対象だと主張してくるケースもあるでしょう。
実際に、海辺に従業員の保養所を建設などしたら、税務調査で「社長はサーフィンはお好きなのか?」「いつ頃から、始めたのか?」など、明らかに、それを狙いに税務調査に来ただろうという質問が、しつこくされたりしますから。
保養所として、とにかく従業員に周知し、利用実績を
では、これらのリゾート施設が、社長個人のために取得されたものではなく、従業員のための保養所として認められるにはどうすればよいのか?
それは、従業員に対してその存在が周知されており、実際に利用実績があるということにつきます。
ですから、もし、保養所を取得した場合には、一度従業員を集めて、オープン記念のイベントを行い、その時の写真を撮っておくとか、保養所利用規約を作成した上で、従業員からの利用申込書を保存しておくなど、従業員の利用実績があることを証明することで、なんとか税務調査を乗り切ってください。
なお、それらのリゾート施設を社長が私物化したものとされるのを回避するよう「得意先の接待のための施設」であるとして、得意先を招待することもあるでしょう。
しかし、社内の従業員以外の者を招待した瞬間、その施設は、福利厚生目的の施設ではなく、得意先の接待用の施設となり、その維持関連費用は、交際費となりますので注意が必要です。
まあ、それでも、そのリゾート施設の取得が、社長への賞与とされるよりは、まだ良いのかもしれませんけどね。
編集部より:この記事は、税理士の吉澤大氏のブログ「あなたのファイナンス用心棒」(2025年9月16日エントリー)より転載させていただきました。






