「歳費返納の意向は取り下げたい」――。
参政党の初鹿野議員が当選前に掲げていた「歳費自主返納」の公約を、当選後にあっさり撤回したというニュースが報じられました。
神谷代表と 初鹿野議員Xより
公約違反の重さ
ここまで明白な公約違反は、実は案外と珍しいレベルです。選挙中に明確に掲げていた政策や行動方針を、当選直後に翻す――これは有権者への裏切りに等しい行為です。
しかも今回の選挙は僅差での勝利。もし「歳費返納」を信じて票を投じた有権者が一定数いたとすれば、その民意を踏みにじることになりかねません。やるせない思いを抱いている方は多いでしょう。
なぜ政治不信が広がるのか
こうした事例が積み重なるたびに、「どうせ政治家なんて約束を守らない」「選挙のときは耳障りのいいことを言っているだけだ」という政治不信が増幅されます。
特に今回は、議員本人の待遇・金銭にかかわることですから、その不信の最たるものです。
もちろん政治の現場に出れば、理想と現実のギャップに直面することは避けられません。全ての公約を100%遂行できる政治家など存在しないでしょう。
しかし「できない理由を正直に説明し、軌道修正を図る」ことと、「当選直後に公約を撤回する」ことはまったく別次元の話です。
今回のケースは、政治全体への信頼を大きく損ねるものであり、特に新興政党にとっては致命的なダメージになりかねません。
公約は「約束」ではないのか
選挙公約は「もし当選したらやります」という約束です。その約束をどれだけ守れるか、あるいは修正するときにどれだけ丁寧に説明できるかが、政治家の資質を測る大きな基準になります。
「有権者との約束をどれだけ重く受け止めるのか」。
今回の報道は、あらためて政治家一人ひとりが突き付けられている根源的な問いを示しているように思います。
終わりに
歳費を返すというのは、制度的に返納が難しくても「寄付」という形で履行できる、きわめてシンプルで個人的な公約です。
それを撤回するのは、やはり明白な裏切りにほかなりません。
政治家が信頼を失うのは一瞬。取り戻すには長い年月がかかります。今回の件を、他山の石としなければなりません。
編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2025年9月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。