もう、うんざりだ。
20冊以上出版して、1万冊以上を紹介していると——って、なんかすごそうに聞こえるけど、要は長くやってるってだけの話。関係性はともかく、ほとんどの出版社に知り合いがいる。で、これまでは「紹介してください」って言われれば、躊躇なく、無尽蔵にマッチングしてきた。
無償のボランティアで、な。
バカだったよ、ホントに。
Mariia Vitkovska/iStock
「うー、じゃねえよ」wwまったく
だって、メリットがまったくないんだもん。いや、正確に言うと、マイナスしかない。善意で動いて、最後は嫌な思いをする。これ以上にアホらしい話ってある?
一番ムカつくのが、出版が決まったときの反応だ。あたかも自分の力のごとく振る舞う。私がつないで企画を通したことなんて、キレイさっぱり忘れてる。「いやいや、あなた一人じゃ絶対無理だったでしょ」って言いたくなる。
さらに酷いのが、出版してから知らされるパターン。出版社から献本されて初めて「あ、出たんだ」って知る。これ、どういうこと? お礼の連絡すらないって、人としてどうなの?
で、そういう本って不思議なもので——いや、不思議でもなんでもないか——まったく売れないんだよね。著者の人間性って、やっぱり本にも表れるんだなあと実感する瞬間だ。
過去にもっともイラっとした人がいる。ちなみに女性。出版社のイベントで知り合った。私はあまり飲まないから(これ重要)、何を話したかは鮮明に覚えてる。酔っ払いの戯言を真に受けるようなタイプじゃないから。
ある日、その人から連絡がきた。「今度、出版するんですうー」って。うー、じゃねえよ。
どうやらヤフーニュースに載せたいらしい。なにやら飲みの席で「ヤフーニュースに載せます」って俺が言ったと主張する。ちょっと待て。「あれ」な感じがしたんだよ、その時点で。
冷静に考えてみろよ。私に書いてもらいたいんじゃなくて、ヤフーニュースに載ることが目的なら、PR会社や広告代理店使えばいいじゃん。数十万円支払えば載せてくれるでしょ、普通に。でも、私に頼むのは無償で載せてくれるから。
厚かましいなあ、と思ったけど、数回載せてあげた。だって、この人「尾藤さんが出版するときには、100冊買いますうー」って。うー、じゃねえよ。まったく。
個人的な約束ならアリかもしれない——なんて、甘く考えていた。
音信不通という名の逃亡術
結果? その人の本、全く売れずに増刷もせずに終了。まあ、そりゃそうだろうな、という内容だったから驚きはしない。
で、数か月後。私の本を出す日程が決まったので連絡した。100冊買うって約束、覚えてるよね?
返事? 一切なし。
連絡はスルー、返信もなし。ブロックでもされたのかな(笑)。
このようなケース、枚挙にいとまがない。いや、ホントに。もう数え切れないくらいある。パターンも決まってる。
- 困った時だけ連絡してくる
- 無償の協力を当然視する
- 成功したら自分の手柄
- 約束は平気で破る
- 最後は音信不通
これ、テンプレートでもあるの?
最近、気づいたことがある。こういう人たちって、なぜか自己啓発系やビジネス書を書きたがるんだよね。「成功法則」とか「人間関係の極意」とか。お前が一番学ぶべきだろ、それ。
でも、一番腹が立つのは、彼らが本気で「自分は悪くない」と思ってることなんだ。私が勝手に親切にしただけで、彼らは何も頼んでない——そんな認識なんだろう。
違うんだよ。頼んだんだよ、確実に。でも、それを認めたくないから記憶を改ざんする。都合の悪いことは忘れる。人間って、そういう生き物なのかもしれないけど、だからって許されるもんじゃない。
善意のリスクが高すぎる世の中
でも、これって出版業界だけの問題なのかな? 最近、どの業界でも似たような話を聞く。善意につけこむ人が増えてる気がするんだが、気のせいか? SNSで簡単に繋がれるようになって、人間関係が軽くなったのかもしれない。
「知り合い」の定義も変わった。一度会っただけで「友達」、メールを数回やりとりしただけで「マブダチ」——そんな感覚の人が多すぎる。
結局、この手の人たちに共通するのは「他人の時間と労力をタダだと思ってる」ってことなんだよね。自分がやられたら絶対に嫌がるくせに、他人にはやらせる。そのダブルスタンダードが腹立たしい。
もう疲れた。本当に。
善意で人を助けるって、こんなにリスクの高いことだったのか。昔はもっと単純だった気がするんだが——いや、昔も同じだったのかもしれない。私が知らなかっただけで。
まあ、いい勉強代だった、と思うしかないか。これからは有料でやろう。相談料、紹介料、すべて明確に。そうすれば、本気で困ってる人だけが来るだろうし、お互いに責任も生まれる。
ビジネスライクで行こう。感情を入れるから腹が立つんだ。
でも、それって寂しいな。世の中がどんどんドライになっていく。人情とか義理とかが死語になりつつある。
あー、やっぱり愚痴になっちゃった。でも、言いたかったんだ、これ。同じような経験をした人も多いと思う。結論? 甘えんな、ってことだ。自力でなんとかしろ。
尾藤 克之(コラムニスト、著述家)
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22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)