「善意疲れ」の時代に思うこと

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なぜ昨日のような記事を書こうと思ったのか。

実は伏線があった。

「恩を仇で返す」出版業界の現実
もう、うんざりだ。 20冊以上出版して、1万冊以上を紹介していると——って、なんかすごそうに聞こえるけど、要は長くやってるってだけの話。関係性はともかく、ほとんどの出版社に知り合いがいる。で、これまでは「紹介してください」って言われれ...

「たまったもんじゃない」よな

SNSで流れてきた、ある落語家の「出版社紹介を断る宣言」。まあ、そりゃそうだろうな、というのが正直な感想だ。善意で動いて逆恨みされるって、本当に最悪じゃないか。

実は昨日、コンビニで店員さんが客に理不尽なクレームをつけられているのを見てしまった。「なんで○○がないんだ」って怒鳴ってる中年男性。店員さんは謝り続けている。見ていて胸が痛くなった。

話を戻すと、この落語家さんの宣言、読んでいて「ああ、限界だったんだな」というのがヒシヒシと伝わってくる。「本当は言いたくないけど言わざるを得ない」って、もうギリギリまで我慢してたってことでしょ。

出版業界の現実なんて、正直よくわからない。でも「過去に実績がないと門前払い」って状況なら、いくら紹介されても通らないのは当然だ。依頼する側は「なんで決まらないんだ」って思うかもしれない。で、その矛先が紹介者に向く。

これ、完全に理不尽だろう。

「私は出版プロデューサーでも何でもありません」——この一文に、どれだけの苛立ちが込められているか。勝手に期待されて、勝手に責任押し付けられて。そりゃあ「たまったもんじゃない」よな。

本当は「いい加減にしろよ」って言いたいところを、ギリギリ大人の対応で収めてる感じが伝わってくる。というか、この文章自体がもう限界超えてるよね。普通の大人なら、ここまで感情を露出させない。

でも、これをSNSで発信するって、それなりに勇気がいったんじゃないか。善意で動いてた人が公然と断り宣言するなんて。きっと同じような立場の人たちからは「よく言った」って声が上がってると思う。

実際、Xで「善意疲れ」って検索すると、似たような悩みを抱えている人がゴロゴロ出てくる。みんな我慢してるんだよ。でも限界はある。

善意につけ込む人たち

世の中、善意につけこんで当然みたいな顔する人、確かに多い。これ、最近特にひどくなってる気がするんだが、気のせいか? SNSで簡単に人に頼めるようになったせいもあるのかもしれない。「ちょっとお願いします」のハードルが下がりすぎた。

学生時代の友人が、フリーランスのデザイナーをやっているんだけど、よく愚痴を聞かされる。「友達料金で」「今度お礼するから」——結局、お礼なんてこない。で、断ったら「冷たい」扱い。

うんざりするよね。

結局のところ、人の善意って有限なんだ。電池みたいなもの。使い切ったら終わり。この落語家さんも、完全に電池切れ状態になったってことなんだろう。

「まあ、自力でなんとかしろってのは正論だ。甘えんな、と。」

この最後の一行、すごく好きだ。もう投げやり感が半端ない(笑)。でも、これが本音でしょ? みんな、こう言いたいけど言えないでいる。

冷静に考えてみると、なんで他人の夢の実現に無償で協力しなきゃいけないの? そもそもおかしくない? ビジネスなら対価を払うのが当然だし、お願いする側だって相応のリスクを負うべきだろう。

でも「友人だから」「知り合いだから」って理由で、タダ働きが当然視される。これ、どう考えてもおかしい。

あ、そうそう。「善意につけこむ人」の特徴って、だいたい決まってる。お礼は言葉だけ。具体的なメリットは提示しない。断られると逆ギレ。そして次のターゲットを探す。

もう、パターンが見えてるんだよ。

この落語家さんの宣言、きっと賛否両論あるだろう。「冷たい」「人情がない」なんて批判も出てくるかもしれない。でも、そういう批判をする人に限って、自分は何もしない。口だけ。

どうでもいいかという諦観

正直、もう疲れた。みんな疲れてる。善意で成り立ってた部分が、どんどん崩壊していく。それでも「昔はもっと人情があった」なんて懐古主義に逃げるつもりはない。時代が変わったんだ。対応も変えるしかない。

結局、この落語家さんがやったのは「境界線を引く」ってことだ。ここまでは協力する、ここからは無理——そのラインを明確にした。当たり前のことなのに、なんでこんなに勇気がいるんだろうね。

でも、これは必要なことだと思う。善意につけこむ人がのさばる社会より、お互いに対等な関係で協力しあう社会の方が、よっぽど健全だろう。

甘えるな、というのは正論だ。でも、それを言うのがこんなに大変だなんて。やっぱりおかしな時代になったもんだ。

まあ、どうでもいいか。結局、何も変わらないのだろうが。

尾藤 克之(コラムニスト、著述家)

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