ブラックカード、まだ追いかけてる人いるんですか?という話

いや、正直驚いた。先週、久しぶりに会った大学の同期が「ついにアメックスのセンチュリオン狙えそうなんだよ」と自慢げに語り始めたのだ。まだその話? 思わず吹き出しそうになった。

確かに私も持っている。JCBのTHE CLASSだけは、まだ財布に入っている。でも今更、という感じが拭えない。

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あの頃は確かに違った

2000年代初頭、まだガラケーでi-modeとか使ってた頃の話だ。ブラックカードには確かに魔法があった。

東京のパークハイアットで「すみません、今日満室で…」と言われた後、デスクに電話一本。15分後には「お部屋ご用意できました」の連絡。しかもスタンダードで予約したのに通されたのは47階のスイート。窓から見える新宿の夜景に、正直震えた。あの時の優越感は――今思えばくだらないが――確かにあった。

海外出張でも同じだった。JFK空港でエコノミーのチケット見せたら「アップグレードできますよ」。ビジネスクラスの広いシートで飲んだシャンパンの味は、今でも覚えている。

でもね、リーマンショックですべて変わった。

2008年9月15日。リーマン・ブラザーズが破綻した日を、カード業界の人間は忘れない。

ダイナースの親会社シティグループが490億ドルの赤字。アメックスも青息吐息。「24時間コンシェルジュ」が「営業時間内対応」に。アップグレード? 「在庫がある場合のみ」に変更。要するに、ほぼなくなった。

友人は「それでもステータスが」と言う。ステータス? SNSでカード自慢してる50代のオッサンのどこにステータスがあるんだ。Facebookに「センチュリオンGET!」とか投稿して、いいね!が欲しいのか。正直、見てて痛い。

ウォーレン・バフェット。総資産14兆円超の男が使うカードを知っているか。アメックスのグリーン。一番ベーシックなやつだ。

ビル・ゲイツも同じ。マイクロソフトの創業者が、ノーマルカード。

なぜか。「カードで見栄張る必要がないから」だ。

カードのステータスって何?

昔、六本木のクラブで見た光景を思い出す。若い起業家がブラックカードをこれ見よがしにテーブルに置いて、シャンパン頼んでた。隣のテーブルの地味なオジサンは現金払い。後で知ったが、そのオジサン、某大手商社の会長だった。資産額、たぶん起業家の100倍はある。

じゃあなぜ、私はJCBのTHE CLASSを持ち続けているのか。

単純だ。新幹線。

かなりの頻度で新幹線を利用する。飛行機嫌いの私は新幹線一択だ。

VIEWカードとの組み合わせでポイントが貯まる。年間で見れば、結構な額になる。あとディズニーランドの特典。ラウンジが使える。それだけ。

ステータス? そんなもの、とっくに諦めた。結局、何が言いたいか。

友人には悪いが、はっきり言おう。いまのブラックカード自慢は、ダサい。

インスタでフォロワー数自慢するのと同じレベル。いや、もっとダサいか。だって、金払えば誰でも取れる時代になったんだから。最近じゃ年収500万でもインビテーション来るらしいじゃないか。

それより、自分の生活に本当に必要なカード選べよ、と。楽天市場使うなら楽天カード。Amazonならアマゾンカード。それでいい。

あ、でも一つだけ認める。海外のレストランで、たまーにブラックカード見せると席が良くなることがある。でもそれ、日本じゃ通用しない。銀座の高級店の女将さんは、カードの色なんか見てない。見てるのは、人となりと、財布の厚さ(物理的な意味で)だ。

最後に一言。実は一番使ってるのはSuicaだ。これが一番便利。ブラックカード?でも、手放せない。これが50代の悲しい性(さが)ってやつか。

まあ、人のこと言えた立場じゃないな。

尾藤 克之(コラムニスト、著述家)

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