石破首相の国連総会演説は、国連改革や二国家解決など論点自体は整然としていた。しかし、国連・連邦準備制度(FRB)・国際通貨基金(IMF)などを題材とした調査報道を行っているインナーシティプレス(Inner City Press(ICP))によると、「日本政府(国連代表部)がグテーレス事務総長側と結託し、自分たちの取材を妨げた」と公表した。問い合わせにも一切応じなかったとされる。結果、演説の中身よりも「批判的記者を締め出した政府」というイメージが先行し、発信の正統性が揺らぎかねない。
石破茂首相の演説中、日本の外交官でさえ眠ってしまう有様
国連総会“消化試合”:日本の首相が空席の会場で演説、代表部はグテーレスと結託しインナーシティプレスを排除
参照リンク:国連で日本の首相が空席の会場に向けて演説、代表部はグテーレスと結託して報道を排除 インナーシティプレス
国連で日本の首相が空席の会場に演説 国連邦代表部がグテーレスと結託して報道を排除
マシュー・ラッセル・リーUN GATE / SDNY 9月23日
国連総会ハイレベル・ウィークを前に、国連を継続的に取材しているインナー・シティ・プレスは9月12日、日本の国連代表部に以下のメールを送った。山崎国連代表
私は国連総会のハイレベル・ウィークの2週間以上前に、貴代表部が報道関係者の国連入構および本総会の取材を確保するよう正式に要請するため、ご連絡差し上げます。
私は国連および国連総会を継続的に取材している記者です。また国連以外の国際問題も取材しています。たとえば今月初めには、IMF(国際通貨基金)の定例会見で質問した内容が記事になりました(「2025年9月1日、Decrypt、Mat Di Salvoによる『エルサルバドルはビットコインを分割へ』」参照)。
しかし、10日以上たっても日本からは何の回答もなかった。その間に石破茂首相は、国連総会のほぼ空席の会場で演説を行い、日本の外交官自身も居眠りしていた。
この件については、さらに詳しい報告を行う予定である。
1. 報道アクセス排除疑惑が最大の火種
- ICPは9月12日、日本代表部に国連総会取材の入構保証を正式に要請したが、10日以上回答なし。演説当日も入場できず「日本代表部がグテーレスと組んで報道を禁じた」と断定している。
- これが事実だとすれば、日本側から反論や経緯説明はなく、透明性の欠如が目立つ。批判的な報道機関を排除した疑惑が事実なら、演説で掲げた「健全な言論空間」との整合性が完全に崩れる。
2. 空席と居眠りが示す国際的存在感の希薄化
- ICPは「会場は空席だらけで、日本の外交官すら眠っていた」と写真付きで揶揄。
- 国連改革を訴えながら、現場の注目を集められず、広報・報道対応の不備が浮き彫りになった。
3. 教科書的な演説内容
- 国連改革:安保理常任・非常任理事国の拡大、拒否権の15年凍結などを提案。
- 中東和平:イスラエルの一方的行動を強く非難し、パレスチナ承認は「するか否かではなく、いつの問題」と踏み込む。
- 核軍縮:NPTを唯一の枠組と位置づけ、米国の拡大抑止維持にも言及。
- 北朝鮮:核・ミサイル開発を重大な脅威と断じ、対話と決議履行を要求。
- 開発・人間の安全保障:TICADやジェリコ農産加工団地など、日本流の支援をアピール。
4. 理念と現実のずれ
- パレスチナ承認を「いつするか」と強調する一方、英国やカナダが国連総会に合わせて承認した動きには同調せず。
- 理念とタイミングの間にギャップがあり、国際社会での存在感は限定的だった。
5. 自己矛盾が生む説得力の欠如
- 演説は「健全な言論空間」や「使命感あるジャーナリズム」を強調したが、ICP排除疑惑を放置すれば説得力は大きく損なわれる。
- 誰を、なぜ入れなかったのか。基準を示さず沈黙すれば、改革や平和を訴える資格そのものが問われる。
結論
石破首相の演説は、国連改革や二国家解決など国際秩序への提言として筋は通っていた。だが、日本政府が批判的記者を排除したとの疑いを説明しないままでは、「都合の悪い声を締め出す政権」という印象が先立ち、メッセージは色あせることになるだろう。
ほぼ聴衆がいない会場 石破首相Xより
この疑惑に対して、まずは報道アクセスの基準と判断経緯を公開し、独立した検証を含む透明化を急ぐべきだ。そうして初めて、演説が掲げた「開かれた国際秩序」や「健全な民主主義」という理念が本物であるということを国際社会に示せることになる。
※ICPの主張は現時点で日本政府や国連から公式な反論や検証結果が示されていない。続報次第で評価が変わる可能性がある。