求人広告が大幅に減少:雇用減速と賃上げ幻想が映す日本経済の実態

全国求人情報協会による8月の求人広告件数は前年同月比4.9%減の226万件となり、2024年4月の現行統計開始以来初めてのマイナスとなった。賃上げ負担の増加が企業の採用意欲を抑えている。

  • 最低賃金引き上げが中小企業を圧迫
    最低賃金は全国平均で時給1118円へ大幅増額。中小企業は人件費に耐えられず、アルバイト・パート採用を絞る動きが広がる一方、保育や教育などAI代替が難しい分野のみ堅調。
  • AI活用による事務職の急減
    職種別では事務職が28%減の22万件、IT技術者も30%減。生成AIや業務自動化を見据えて事務採用を絞り、派遣や外部委託に切り替える動きが加速している。
  • 国際的潮流:AIによる人員削減
    米国ではマイクロソフトやメタ、フォードなどが相次ぎ数千〜万人規模で人員削減。AI導入は労働者より資本家に有利に働き、国連も雇用不安と格差拡大を警告している。
  • 非正規化と労組の「正社員ギルド」問題
    労働組合は正社員雇用を守るため賃上げを自粛し、金銭解雇に反対。企業も雇用維持さえできれば低賃金でも組合が容認する。労使が結託したこの構造が賃金デフレを固定化している。

日本の雇用と賃金を取り巻く現状は、単なる景気循環ではなく構造的な停滞に陥っている。AIの導入や最低賃金の大幅引き上げが企業の採用意欲を冷やし、労働組合の「正社員ギルド」化が賃金デフレを固定化している。政府が賃上げを叫んでも意味がなく、根本的な労働市場改革が欠落したままでは、雇用と賃金の悪循環は止まらない。

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