米国ではここ数か月、宗教施設や政府関連施設を標的とした銃撃事件が相次いでいる。ミシガン州グランドブランのモルモン教会での銃乱射・放火、テキサス州ICE(移民・税関捜査局)施設への銃撃、ミネソタ州カトリック教会での大量発砲、さらに保守系活動家チャーリー・カーク氏の射殺事件など、政治や宗教を背景にした凶悪事件が連続した。SNSでは「内戦」という言葉が急増し、トランプ大統領自身も左派過激派を名指しで非難し軍の派兵を指示するなど、米社会の分断が深まっている。ただし、実際に国家規模の内戦へ至るかは慎重に見極める必要がある。
銃撃・放火されたモルモン教の教会
テロが頻発するアメリカ
ミシガン州グランドブラン(9月28日)
- 40歳の男がモルモン教会に車で突入後、ライフルを乱射し火を放つ。1人死亡、9人負傷。
- 前日に教会の大管長が死去しており、動機の関連は不明。容疑者は警察との銃撃戦で射殺。
- トランプ大統領は「キリスト教徒を狙った攻撃」とSNSで主張し、宗教的迫害の色を強調。
テキサス州ダラス(9月24日)
- ICE(移民税関捜査局)収容施設に対する銃撃で1人死亡、2人重体。
- 現場に「反ICE」と書かれた薬きょうが残され、政治的動機の可能性。
- トランプ大統領は「極左が法執行機関を悪魔視した結果」として左派批判を強め、大統領令で国内テロ組織指定やネットワーク破壊を宣言。
ミネソタ州ミネアポリス(8月27日)
- カトリック教会で23歳の男が外から窓越しに銃を乱射、8歳と10歳の子ども2人死亡、17人負傷。
- ライフルなど複数の銃を使用。FBIは国内テロおよびカトリック憎悪犯罪として捜査。
保守活動家チャーリー・カーク氏射殺(9月10日)
- ユタ州で人気保守活動家カーク氏が射殺され、容疑者の弾薬には「おいファシスト!」と刻印。
- トランプ大統領は「極左が問題」とし、容疑者への死刑を強く要求。
- SNSでは「内戦」という言葉が急増し、双方が相手の暴力を口実に攻撃を強めている。
分析と論調
- 宗教施設(モルモン教会・カトリック教会)や連邦施設(ICE)など象徴的な場所を狙った事件が連鎖し、政治的動機や宗教的憎悪が背景にある可能性が高い。
- トランプ大統領は「極左過激派」への非難をエスカレートさせ、オレゴン州ポートランドへの連邦軍派遣指示まで表明。SNSでは「内戦」ワードが急増し、社会的分断は深刻化している。
- ただし、米国は連邦制であり、治安当局も強力で、国家として内戦に突入する兆候が直ちにあるとは言い難い。暴力的事件は局所的で、米国内の広範な地域が武装衝突状態にあるわけではない。
- 現地の声は「5年前のほうが不安定だった」「メディアが煽っている」と指摘もあり、過剰な内戦論には留保が必要との見方もある。
https://twitter.com/BrandonKHill/status/1970332657637867585
宗教・政治・移民政策など米国社会を分断する軸に沿って銃撃や放火事件が頻発し、SNSや政治家の発言が「内戦」の言説を加速させている。トランプ大統領の強硬姿勢は支持層を刺激し、分断は一層深まりかねない。ただし、米国社会は重大な分岐点に立つ一方で、「内戦化」という断定には慎重な検証が不可欠である。