2028年大統領選へ動き出すエマニュエル氏:「イスラエル最優先」路線に疑問の声も

バイデン政権下で駐日米国大使を務めたラーム・エマニュエル氏が、2028年の大統領選に向けて本格的に動き出したとの観測が強まっています。先日、民主党の重要な政治資金調達イベントが開かれたアイオワ州に登場し、同州を「訪問」する有力政治家たちの仲間入りを果たしました。

アイオワ州は大統領選の行方を占う上で非常に重要な州であり、各候補が最初に支持を固めたい場所でもあります。そんな中でのエマニュエル氏の動きに対し、「出馬への布石ではないか」という見方が党内外で広がっています。

デモインズでの民主党の魚のフライイベントで、元シカゴ市長ラーム・エマニュエルは、経済的公平性、教育、そして現状への疲れに焦点を当て、2028年大統領選への出馬を「考えている」。

エマニュエル氏は、ホワイトハウス首席補佐官(オバマ政権)、下院議員、シカゴ市長、そして直近では駐日米国大使という、アメリカ政治におけるあらゆる階層の要職を歴任してきました。その手腕と政治的ネットワークの広さは、民主党内でも評価されています。

石破首相とエマニュエル米大使 首相官邸HPより

一時は「幻のカマラ・ハリス政権」での要職起用も噂されていたほどで、本人が大統領の座を視野に入れていても不思議ではありません。

しかし、エマニュエル氏には大きな障壁も存在します。特に注目されているのが、親イスラエル的な立場です。近年、民主党内では、イスラエルによるガザ地区への軍事行動に対する批判が強まっており、イスラエル支持一辺倒の姿勢は党内左派や進歩派の支持を得る上でマイナス要因となりかねません。

特に、2024年以降、イスラエルの軍事行動が「倫理的限界を超えている」とする見方が米国内でも増えており、大多数が民主党を支持するユダヤ系有権者はイスラエルへの無条件の支持を見直し始めています。

民主党のイスラエルに対する支持の低下は、ユダヤ系民主党員にも及んでいます。 政治とイデオロギーが、ユダヤ系民主党員の宗教的アイデンティティをますます凌駕しています。

エマニュエル氏は今年、長崎市がイスラエルを原爆犠牲者追悼式典に招待しなかったことに抗議して、自らも式典への出席を拒否。駐日大使としては異例の対応に、日本国内からも「日本人の感情よりイスラエルを優先したのではないか」との批判が出ています。

その一方で、彼の外交手腕や政治的知見を評価する声も依然として根強く、出馬すれば民主党の候補者争いにおいて「現実的な実力者」となる可能性もあります。ただし、大統領の座を目指すには、より広範な有権者の支持が必要不可欠です。

アイオワ訪問は、そのための第一歩に過ぎません。今後、エマニュエル氏がどのように自らの立場を軌道修正し、党内での支持を広げていくのかが注目されます。