2025年はトランプ米大統領の発言と行動に唖然とし続ける毎日だったが、もう一つ唖然としたことがある。言葉を選ばずに言ってしまえば、米国のインテリがこれほど「ヘタレ」揃いとは思わなかった(言ってしまった・・・)。
大学人と言わずジャーナリストと言わず、トランプから「解雇する」「補助金を切る」「放送免許を取り上げる」と脅されると、軒並み黙ってしまう。政府の弾圧にもめげずに声を上げ続ける中国の人権派の方がよほど勇敢に思えてくる(あるいは勇敢に反対している米国人もいるかもしれないが、ヘタレなメディアは報じない)。
人は分断されると弱いから、トランプに抗議し反対するには拠り所が必要だ。いま米国でそんな拠り所に辛うじてなっているのは州政府のようだ。有志州同士が組んで、ワクチンや化石エネルギー、移民を巡るトランプ政権の政策に異議を唱え、裁判所に提訴し、更には独自の政策を講じようとしている。
一方、トランプ政権は従わない諸州に補助金をカットし、果ては連邦権限で州兵を動員しようとしている。
連邦の圧力に抗する諸州の提訴を連邦最高裁はどう裁くだろうか。トランプに任命してもらった保守派優勢の最高裁はトランプに軍配を挙げるかもしれない(そうなれば「ゴム判」の名前を進呈しよう。政府の追認ばかりしている中国人民代表大会の渾名だ)。
提訴が容れられなかったら、諸州の政府はどうするのか。「万策尽きた」と投降するかもしれないが、そうなれば、トランプは議会も裁判所もメディアも州政府も、誰も止められないKINGになり、アメリカ合衆国は民主主義を止めて王制国家に移行したも同然になる(実際、トランプ支持者のイデオローグには「民主主義より君主制を」と唱える人がいるそうだトホホ(カーティス・ヤーヴィン))。
裁判で負けても有志諸州が組んでなおも抵抗を続けたら? さすがに有志諸州が合衆国からの独立を宣言するとは思わないが、「冷たい内戦(コールド・シビルウォー)」が始まるのではないか。3年前急逝されて惜しまれた中山俊宏先生が「アメリカは下手をすると内戦になるかもしれませんよ」と仰っていたのを思い出す。
南北戦争から165周年になる来年はどんな年になるだろうか。囧rz
編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2025年10月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。