「白い靴下」で思い出す、あの夏の違和感

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本日紹介する一冊は「なんで学校は変なの? 教員の父に教育実習生の娘がストレートな質問!」。元教員の鋭い視点がなかなか興味深い。その一部を紹介する。

著者は、息子の中学校から配られた校則集を見て、思わず吹き出したそうだ。

いや、笑えない。「靴下は白に限る」——20年前、自分が中学生だった頃と一言一句同じだ。

何が変わったんだ、この国の教育は。

スマホは全員が持ち、AIが宿題を手伝い、Z世代は投票権を18歳で持つ。それなのに、靴下の色は相変わらず白。ツーブロックは「事件に巻き込まれる」から禁止。ちょっと待て。本気で言ってるのか。

息子に聞いてみた。「先生、ちゃんと理由説明してくれた?」「ん? 校則だから、って」 知ってた。いや、知ってたけど、それでも腹が立つ。

思い出すのは、高校2年の夏。友達が黒い靴下を履いて登校した日のことだ。生徒指導の教師に呼び止められ、延々と説教。「なぜ白でないといけないのか」と聞いた友人に、教師は言った。「規律を守る訓練だ」。

訓練? 靴下の色で?

あれから何年経ったと思う。社会に出て、上場企業で働いて、海外の取引先とも仕事をして——誰も靴下の色なんて気にしない。黒だろうが紺だろうが、仕事ができればそれでいい。むしろ「個性を出せ」「自分らしく働け」と言われる時代だ。

なのに、学校は変わらない。いや、変わろうとしない。

「生徒を守るため」「集団の秩序のため」——聞き飽きた言い訳だ。本当にそう思ってるなら、データを見せてくれ。白い靴下を履いていた生徒と、そうでない生徒で、成績や素行にどれだけ差があるのか。ないだろう、そんなデータ。

というか、ツーブロックで事件に巻き込まれるって、どういう理屈だ。髪型が原因で犯罪に遭うなら、それは髪型の問題じゃなくて社会の問題だろう。論点がずれてる。完全にずれてる。

先日、PTAの集まりで他の保護者と話した。「でも、まあ、学校にも事情があるし」「あんまり文句言うと、子どもに影響が」——みんな諦めてる。いや、諦めさせられてる。

これが一番の問題なんだと思う。学校は「話し合い」をしない。一方的に「これが校則です」と押し付けて、疑問を持つことすら許さない空気を作る。保護者も生徒も、結局は黙るしかない。

冷静になろう、と思った。でもやっぱり無理だ。息子の世代に、同じ「白い靴下」を強いる社会が許せない。

変えられるはずだ。変えなきゃいけない。でも、誰が最初に声を上げるのか。それが問題だ。

尾藤 克之(コラムニスト、著述家)

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