グローバルだからこそのダイバーシティ

近代市民社会の成立は、国民国家の成立によって画される。国民国家の成立は、国内においては、理性の支配を実現し、暴力による支配を否定するが、かえって、戦争という国家間の暴力の行使を正当化させた。

グローバル化とは、歴史の進歩であり、人類の叡智の進展であり、理性の創造的な自己展開なのであって、最終的に、地球の上に、一つの世界市民社会を成立させ、理性の支配を実現し、暴力による支配を廃絶するはずである。

Viktor Morozuk/iStock

グローバルは、端的に人と人との関係である。日本企業がアメリカの顧客に商品を売るというのは、グローバルな発想ではない。グローバルな発想では、単に一企業が一顧客に商品を売るだけのことである。グローバル化とは、そうした発想の転換のことである。

理性以外には人間には共通するものはなく、全てが個性的ある。グローバルは、理性による支配であると同時に、多様なる感性、心性、価値観、言語、食べ物、着るものなど全ての個性的なものの共存である。故に、グローバルと並んで、もう一つの重要概念が多様性、即ち英語のダイバーシティになるわけである。グローバルは、多様性と組み合わさって、真に意味のあるものになるのである。

多様なものは、多様なものとして、相互に尊重しあい、相互に刺激しあい、相互に吸収しあい、相互に働きかけあうことで、新しいものを創造していくわけで、その過程が人類の進歩であり、世界市民文化の創造的革新であり、経済社会の成長なのである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
X(旧Twitter):nmorimoto_HC
Facebook:森本紀行