26年続いた自公連立政権から、公明党が離脱しました。次の総選挙では、衆院の議席数は自民党(196人)、公明党(24人)とも減らすことは確実で、政界の多党化、多極化はますます進みます。自民党のガバナンス(統治)は古い体質そのままで、解党的出直しは口先だけですから、野党連立による政権交代で政界の体質を一新する機会にしたらよいと思います。
急速な時代、世界の流れに政界はついていけなくなっています。野党は過去の失敗を学び直すのが必須です。基本的な政策で一本化できるもの、できないものを仕訳けして、細事、細部にこだわらず、激変する世界の中でどう生き抜いていくかという大命題を立て、協力していくことです。
やはり二大政党、二大グループによる政権交代をしていかないと、競争が生まれず、政治は刷新されずよどみます。
公明党が野党連合に関心
連立から離脱した公明党が「野党の国対委員長会談に出席させてほしい」と申し入れたそうです。野党連合の可能性がでてきました。立憲民主党(148人)、国民民主党(27人)、日本維新の会(35人)の連立で210人で自民単独を上回り、公明党(24人)も加われば234議席になります。
「政治の空白がこれ以上続くのは許されない」(日経社説)、「一刻も早く新しい内閣を発足させるべきだ」(読売社説)と、メディアは言わずもがなの主張をしています。政権交代が実現しても、安定性を欠き、政党間の足の引っ張り合いで政治も「空白の10年」の時代に入るかもしれません。「政治の空白」は政治をリフレッシュするコストなのかもしれない。
自民党政治には「空白」ではなかったのかというと、そうではないでしょう。安倍長期政権は「長期」の部分が評価されていても、アベノミクス(異次元金融緩和、財政拡張政策)により、国債残高はGDPの2倍以上になり、円安も進んで、日本の国際的地位は3位から4位へ、近い将来さらに5位に後退です。高市総裁は安倍政権の後継を名乗り、積極財政の名のもとに低金利、財政拡張をする考えですから、首相になれば、アベノミクスのような歴史的な失敗を再演しかねません。
政治には政権交代によるリフレッシュが不可欠です。鳩山、菅氏による民主党政権は素人政治の域を出ず、基本的な政策で多くの間違いをしました。野党もそれを学習しているでしょうし、無理な財政政策を進めれば、英国のトラスショック(財源の裏付けのない減税政策で、ポンド安、金利高、株安のトリプル安)という失敗を目の当たりにしているはずです。
選挙という政治市場でポピュリズム政策で勝っても、国際マネー市場で敗北するかもしれない。政治市場とマネー市場の両にらみが新しい政治なのです。野党も政権交代を実現したら、政治市場とマネー市場の両立を考えなけばななりません。財源なき財政政策は市場が警告を発します。
政治家と官僚機構のバランスが必要
特に安倍政権以来、政治家が官僚機構の上位に立ち、人事、政策を思うまま動かしました。政権交代を政治家と官僚機構のバランスを考え直す機会にしたい。主要人事を支配する内閣人事局を改革すべきですし、政権に接近して出世しようとする官僚の排除が必要です。
公明党の連立離脱の際、「一方的に離脱を伝えられた」と、高市氏は記者団に述べました。実態は違うのでしょう。自民党のほうが公明党と距離を置き、国民民主党を取り込もうとしていました。特に麻生氏(副総裁に復帰)は公明党嫌いで、党人事も公明党が嫌がる布陣を敷きました。
党幹事長は義弟の鈴木俊一氏を起用し、幹事長代理に裏金問題に関与し、旧統一教会と近かった萩生田光一氏をあてるなど、露骨な人事で、公明党の神経を逆なでしました。
高市氏の顔がこわばる
高市総裁の誕生は「大逆転」とされ、麻生氏の政界工作が成功し、党人事を手中にしました。麻生氏は満面の笑みを浮かべ、それを押し殺そうとしても押し殺せない映像が流れました。「麻生氏はもっとも古い自民党体質の政治家」、「自民党の解党的出直しなんて口先だけ」とされました。公明党もこれ以上、自民党と組むわけにはいかないと、判断したのでしょう。麻生氏は満面の笑みを失い、高市氏の顔も緊張でこわばっています。
国民民主党の玉木代表は「公明党が抜けたあと、われわれが政権に加わっても意味がない」と明言しています。野党複数が首相指名で一本化すれば、政権交代は実現します。野党も政権交代が政治再生のチャンスと考え、基本的政策の一本化に努め、個別の政策で混乱が起きないようにしてほしい。
政治ジャーナリズムも、どの党とどの党が組むのか、誰と誰が密談しているとか、舞台裏の情報ばかりに執着せず、どのような連立政権が政治再生によいのかという政策論に力を入れなければなりません。
自公連立政権解消について「大変残念に思う」とコメントする高市総裁 自民党HPより
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2025年10月11日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。