歴史的な和平と言ってもよいでしょう。多分、教科書にも記されるであろう今回のガザを巡る停戦が中東和平サミットを通じて確認されました。トランプ氏が主導したこの和平第一段階の完了宣言は一定の評価はされるべきでしょう。
もちろん、氏が臨むノーベル賞が受賞できるかは第2弾以降を含めた安定的、恒常的な平和と再建ができるかにかかっているとも言えます。今年のノーベル平和賞を逃したトランプ氏は悔しがっていましたが、ノルウェー ノーベル委員会のポジションは様々な戦争の和平への尽力が確実に履行されるかを確認したいという意向なので来年に受賞の可能性はあり得るとみています。
さて、今後であります。第1弾の完全履行もまだ確認されたわけではないですが、第2弾のハードルは更に高いとされます。その中で特に難しいとされるのはハマスが武装解除するかであります。ハマスからすれば武装解除=存在否定になるので極端な話、ハマス解散を意味することになると思います。その上、イスラエルがいつどうやってガザ地区から撤退するかであります。
今回の中東和平サミットにはネタニヤフ氏は招待されたものの出席しませんでした。ハマスの指導者も欠席です。つまり戦争当事者が欠席する中でトランプ氏の強烈なアピールだけが目立った結果になっています。ただ、トランプ氏のような剛腕さがないとここまでたどり着かなかったことも事実でしょう。
中東和平サミット2025 Wikipediaより
なぜネタニヤフ氏はトランプ氏に説得されたか、あるいはハマスも第1弾和平に合意する決断をしたのか、私にはトランプ氏のアメとムチの姿勢が恐ろしく感じたからではないかとみています。トランプ氏の性格は極端なのです。中庸とか妥協がなく、常にテンションが一杯で針が振り切れた状態です。故にネタニヤフ氏と言えどもトランプ氏の言うことを聞かなければどうなるかわからないというところまで追い込まれていたのだとみています。
当地の国営放送のラジオでこの和平について専門家は「今回の和平は素晴らしい。だが、ネタニヤフ氏は戦争をやりたくてやりたくてしょうがない。彼の言動が第2弾以降の行方を占うだろう」と。
個人的にはネタニヤフ氏が再び戦争をするならばイスラエルの国内世論が彼を許さないとみています。徹底的なネタニヤフ降ろしが起きかねない状況も考えられます。ただイスラエル国会(クネセト)で今年6月12日にネタニヤフ政権の継続が決議されています。同国のルールでは一旦継続が決まった決議は6か月間はそれを維持しなくてはいけないことになっています。よって何らかの動議が上がり、国会を再度解散する機運が盛り上がっても12月12日までは解散できないということになります。
更に今年のハヌカ(ユダヤ教の年に一度のお祭り)が12月14日から22日ですので実質的には年内のイスラエルの内政上の動きは少ないとみています。とすればこれからの2か月間が和平第2弾を強力に推し進めるチャンスであるとも言えます。
私の思うやや極端な対策としてネタニヤフ氏をタイミングを見てアメリカに亡命させるという手法があるかと思います。ネタニヤフ氏は自らが首相の座を降りたら逮捕監禁が待っているとされます。よってタイミングを見計らい、イスラエルを脱出できる身の安全をアメリカが内々に約束すればスムーズな展開になるかもしれません。
一方でイスラエル国内は少数の政党が乱立しており、連立の組み方でいつも総選挙をしているイメージがあります。ネタニヤフ氏が下野していた時代には3年半で5回も総選挙をしたこともあります。イスラエルも国内世論がまとまらない国だとも言えます。
まとまらない国とは何か一つのことができないとも言えます。よって(イスラエル)ー(ネタニヤフ)=内政混乱となり、これは反イスラエル派にはにんまりする状況となるでしょうが、イスラムの過激派分子がこのタイミングでイスラエルにちょっかいを出すこともできないとみています。理由はそんなことをすればトランプ氏がまた出てくるからです。
10月6日の本ブログで「ネタニヤフ首相は振り上げた拳を下ろせるのか?」と題した内容を書かせていただきました。その際、複雑な連立方程式が1週間で解けるのかと疑問を呈しましたが少なくともここまでは私の杞憂に終わっており何よりです。その中で指摘したイスラエルの正統派、超正統派とされる保守系がどこまで今の状態を我慢できるのか、これはまだ予断を許さないとみています。世界からの包囲と監視網はより厳しく、彼らがどこかでマインドセットできるのか、年明けにまた政局が来るのか、ここは我々の常識からはかけ離れたところがあり、引き続き注視が必要でしょう。
トランプ氏もイスラエル/ガザ問題への注力は一旦は横に置いて置きたいのではないかと思います。トランプ氏は次の課題であるアメリカの政府機関の停止問題、ウクライナの問題、はたまた中国とのやり取りなど山積する案件の処理にかかわっていくことになると思います。
つくづく感じるのはトランプ氏は様々な評価があるにせよ、実にタフだと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年10月15日の記事より転載させていただきました。