情熱に勝るものなし:大谷翔平選手の一試合3ホームランに思うこと

大谷サンの昨夜の活躍ぶりには驚きというより人間技とは思えない異次元ぶりに苦笑いしてしまった方もいらっしゃるでしょう。私も速報ニュースで「大谷が3本塁打」とあったので、あぁ、PS(ポストシーズン=プレーオフ)で3本目かと思ったらそうではなく、投手をやりながら1日3ホームランとの報に思わずYoutubeで確認してしまったほどです。

大谷翔平選手 Wikipediaより

彼の今期のPSは初めにホームラン2本を打ったもののその後不振でヒットが出ず、19打席ノーヒット。そこで異例の打撃練習で調整をしたら一気に調子を取り戻したようです。

大谷サンは自己調整能力が高いとされています。つまり不調になっても自分で軌道修正する能力を持っているというわけです。これは自己分析を客観的に行えるとともに24時間を野球漬けにしていないからではないかと思うのです。必ず、どこかで気持ちの切り替えをする癖をつける、それで自分を見つめ直す瞬間を作るのだろうと思います。

多くの方の日常生活は30年前に比べてはるかに「忙しくなった」と思います。物理的に忙しくなったこともありますが、むしろ「せわしい」のではないかと思います。周りが忙しそうにするとつい自分も忙しい気がする、というアレです。たとえば年末の最後の3日間は空気がピリピリした感じがします。私からすれば皆が皆、そう忙しいわけではなく、通常時とやや違うことをすることが多いだけの話なのですが、人は安定飛行のパタン化された日常生活を送っているため、イレギュラーなことがあると急に落ち着かなくなるのです。

とすれば、普段からイレギュラーなことをするのを癖にすればよいだけです。そうすればちょっとのことではドタバタしません。

大谷サンは毎日、同じ野球をやっているだけではないか、と思う方がいたら大いに違うと申し上げます。まず、試合の半分はアウェーです。つまり年中、遠征しなくてはいけません。次にシーズン中はチームと個人の2つの成績の車輪が選手の気持ちを前向きにさせるか、給与程度の仕事と割り切るか変わってきます。そして観客やスポーツ報道を通じたコメントも突き刺さるでしょう。つまり全く気を抜けないのです。

ドジャーズの場合は日本人スター選手を抱え込むことで日本人選手同士が張り合う環境もできています。その点では大谷サンもすごいのですが、ドジャーズというチームに心の火を灯す仕組みが存在しているとも言えそうです。エンジェルスの時とはだいぶ違うのです。

ではその原動力は何処にあるのでしょうか?私は彼が心底、野球が好きなのだと思います。それがシンプルに情熱に転換しているのではないでしょうか?

ところで日本の企業では給与が大きく跳ね上がり、初任給ばかりではなく、一部の企業では中高年の給与体系も見直し、また管理職で3-4千万円級のプレーヤーも出始めています。私は日本の給与体系はアメリカなどに比べかなり低廉に抑えられていたので今の動きについては良い傾向だと思います。しかし、給与をあげたから仕事ができるようになるかといえばそれはほぼ無関係だと断言してよいと思います。

仕事に情熱がある人は給与は二の次なのです。与えられたタスクに対してどうやって最大の成果が得られるか、試行錯誤を繰り返し、一歩でも近づくために努力し、積み重ねる、この姿勢を持ち合わせているかどうかが全てだと思っています。

例えば仮にアメリカ人が日本人の2倍の給与をもらっていたとしても、何かに情熱的かといえばそういう人は少ないでしょう。35年前にスイスに長期出張した際に当時のスイスの初任給が40万円だったのに軽い衝撃があったのですが、それは現地の見合いの物価水準にすぎず、極端な話、スイスが世界に発信したことって時計以外に何がある?と聞かれるとそんなにないのではないかと思います。つまり給与水準がやる気を引き出すわけではないのです。

ではどうやったら情熱を持てるのでしょうか?私は外部による刺激なのだと思います。基本的には人との接点を増やし、異業種交流で自分の知らない世界を見る、またすべての人が持ち合わせている才能に気づき、光を与えその分厚い殻を破るパワーを引き出すことかと思います。パワーは思考を後ろ向きから前向きの姿勢にしますが、あまりにも高すぎる目標ではなく、つま先立ちぐらいで届く目標を何度も繰り返すことが継続しやすいヒントだと思います。

最近はどうなのか存じ上げませんが、かつてサラリーマンは会社帰りに一杯ひっかける際のおかずは会社と上司への愚痴だとされました。私もそういう経験はありますが、今思えば文句言うことで発散したかもしれませんが、何の生産性もなかったな、と思っています。

読書の秋ですが、様々は人の作品を読むことで思わぬ勇気を頂くことも多いです。案外外国作品の方が良かったりします。国内の小説は申し訳ないですが、人の性に焦点を当てたものが多く、特に女流作家さんは往々にしてお涙頂戴の暗く、人生の苦悩を描くものが多いので読み手が滅入ることも多くなります。書籍販売業をやっているのでジャンル問わずで乱読してますが、読書ひとつにしてもエネルギーをもらえる書とエネルギーを持っていかれる書の両方あるのです。

Be Positive。 これが日々のスタートです。そして今日はこれをやるぞ、今週はこれを片付けよう、今月は手つかずだったあれにチャレンジだ、という具合につま先立ちの目標を設定することでだいぶ様相は変わってくると思います。

私だって大谷サンのように投げては三振奪取、バットを振ればホームランという域に達したいといつもイメージトレーニングしています。そういう意味では昨日は実によいものを見せてもらいました。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年10月19日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。