維新が自民と連立政権をつくると合意した。問題の議員定数には国民民主の玉木代表が「賛成」だと言っているので、法案は国会に提出されるだろうが、他の全野党が絶対反対で紛糾し、通るとは思えない。
こんな党利党略で議員定数をいじるのはよくないが、これが「改革の入り口」という吉村代表の話はわかる。やるなら議員定数だけでなく、選挙制度を改正すべきだ。
小選挙区と比例代表が混在して「決まらない国会」
1994年の政治改革では、小選挙区制にしたい自民党とそれに反対する野党の妥協で、小選挙区と比例区を3:2にした。これは中途半端で、かえって野党がバラバラになり、何も決まらなくなった。
この原点に戻って考えると、衆議院は完全小選挙区、参議院は完全比例代表と役割分担してはどうか。小選挙区制になれば、2大政党による政権交代が実現する可能性が大きくなる。今は比例代表が混在しているために混乱しているのだ。
参議院も、かつては「衆議院のカーボンコピー」だといわれ、今は「ねじれ」の原因になっている。これは二院制の国ではよく起こることだが、衆議院の優越を明確にすれば解決できる。
小選挙区制で「多様な民意が無視される」という批判に対しては、参議院を完全比例代表にすればいい。これによって過半数の政党がなくなると(今のように)政治が混乱するので、泡沫政党を防ぐために5%条項(得票率5%以下の政党は議席を得られない)を設けたほうがいい。
両院の不一致は両院協議会で解決できる
こういう案は従来もあったが、衆参の議決が違ったときどうするのかという問題がある。憲法では、衆議院と参議院の議決が異なる場合は(予算と条約以外は)衆議院の2/3による再可決が必要だとしているため、憲法を改正しないと両院の不一致は解決できないというのが通説である。
しかしこれは法技術的には、憲法を改正しなくても実現できる。憲法59条3項では、両院の議決が異なる場合には「衆議院が両院協議会を開くことができる」と定めている。これが憲法の本来想定している調整メカニズムであり、この協議会で「衆議院の議決を優先する」と決めればいいのだ。
両院協議会の委員は「各議院において選挙された各々十人の委員でこれを組織する」(国会法89条)となっているが、各院の10名全員がそれぞれの院の当該議決の支持派で占めることが原則である。議長は委員の互選で選ぶ。
衆参の役割分担を明確化する「政治改革2.0」を
ただ両院協議会の議決は全委員の2/3なので、合意が得られないことが多い。これは両院の議長が勢力分布に比例して選ぶことが慣例になっているためで、原則通り当該議決の支持派(たとえば自民・維新)から選べば、参議院で過半数を得られなかった場合も衆議院の議決を再可決できる。
これによって参議院に最終決定権がなくなるので参議院は反対するだろうが、この改革は国会法を改正しなくても可能である。ただ議長の裁量で議決が決まるのは好ましくないので、国会法を改正して「協議会の委員は各院の議決を支持した会派から選ぶ」と明文化すればいい。
こういう両院協議会の改善案は、これまでにも議論されてきたが、参院自民党の反対でつぶされてきた。維新が議員定数を入り口にして、衆参両院の役割を明確化する政治改革2.0をするなら、これが次の改革ではないか。






