高市内閣がスタート:現実主義外交と財政拡張の成否

21日、憲政史上初の女性首相となる高市早苗が第104代内閣総理大臣に指名され、自民党を中心とする「高市内閣」が正式に発足した。この内閣は、日本維新の会の閣外協力を得た「自維連携政権」として、政策面で改革と安定の両立を目指す構えを見せている。皇居での親任式・認証式を経て、同日夜に初閣議が開かれた。

高市内閣の閣僚 首相官邸HPより

高市首相は就任会見で「積極的な財政政策と安全保障の強化を両立させる」と述べ、デジタル経済、防衛力整備、エネルギー自立を三本柱とする政策方針を示した。前政権からの路線を引き継ぎつつも、財政再建よりも成長重視の姿勢を鮮明にしている。とくに女性初の首相として「次世代への責任」を強調し、内閣には女性閣僚を過去最多の6人起用した。

  • 高市総理は会見で、金融政策を含めたマクロ経済の最終責任は「政府が持つ」と明言。これまで中立的とされていた 日本銀行 との連携強化を図る姿勢を示した。
  • 経済対策の早期立案を指示し、初閣議で「経済政策を加速する」というメッセージを出している。
  • 外交・安全保障面でも、「防衛力を充実させる」「国際社会の変化に迅速に対応する」といった枠組みが打ち出されており、特に対米関係・東アジア情勢に注力する姿勢が見える。
  • こうした動きを受け、政界・財界では「変革に向けたアクセルを踏み込む新政権」という印象が広まりつつある。

主な閣僚

職名 氏名 年齢 主な特徴・経歴
内閣総理大臣 高市早苗 64 日本初の女性首相。元総務相・経済安保相。保守派の論客で、経済・安全保障政策に精通。
官房長官 木原稔 56 元防衛相。調整力に優れ、政権運営の要となる実務派。
財務大臣 片山さつき 66 元金融担当相。財務官僚出身で積極財政・歳出改革を掲げる。
防衛大臣 小泉進次郎 44 政治発信力の高い若手。外交・安全保障への挑戦に注目が集まる。
総務大臣 林芳正 64 元外相・文科相。調整型のベテランで行政改革や地方自治に強い。
外務大臣 茂木敏充 70 長年外交の最前線で活動。経済外交と日米関係の再構築に取り組む。
経済財政担当大臣 城内実 60 元外務副大臣。外交・経済両面に通じる実務派。成長戦略の司令塔を担う。
経済産業大臣 赤沢亮正 64 産業政策・エネルギー分野に詳しい。グリーントランスフォーメーション(GX)推進を主導。
国土交通大臣 金子恭之 64 地方インフラ政策に通じる。公明党から自民党へのポスト交代で注目。
デジタル大臣 松本尚 63 医師出身。デジタル医療や行政DXを推進。デジタル庁再編を主導する見込み。
地方創生担当大臣 黄川田仁志 55 地方行政に精通。人口減少対策と地域経済の再生を担当。
経済安全保障担当大臣 小野田紀美 42 若手女性議員。技術保全とサプライチェーン防衛を重視する。
厚生労働大臣 上野賢一郎 60 社会保障と雇用政策に詳しい。少子化対策を最重要課題に掲げる。
文部科学大臣 松本洋平 52 教育政策と科学技術分野の専門家。リカレント教育や研究支援に注力。
環境大臣 石原宏高 61 環境行政と原子力防災を担当。脱炭素社会の実現を目指す。
国家公安委員長 赤間二郎 57 危機管理・治安維持の専門家。災害対応にも経験を持つ。
農林水産大臣 鈴木憲和 43 若手農政通。スマート農業と農産物輸出拡大を推進。
法務大臣 平口洋 77 ベテラン議員。司法行政の安定と法制度の透明化を重視。
復興大臣 牧野京夫 66 東北復興と災害復旧の継続支援を統括。

 

今後の焦点と課題

  1. 経済成長と賃金上昇の両立:高市首相が強調したように、賃金の上昇を伴わない物価安定は実現しないという見方が示されており、デフレ脱却・賃上げ・成長戦略の組み合わせがカギとなる。
  2. 金融政策との連携:政府が「最終責任を持つ」と宣言した以上、日銀との役割分担・協調メカニズムの見直しや透明性の確保が求めらている。
  3. 外交・安全保障の対応:東アジア情勢の緊張、米中関係の変化、そして防衛力の整備など、内外の安全保障課題が山積している。茂木外相の起用はこうした状況を見据えた布陣といえる。
  4. 政権運営の安定性:自民党単独による政権基盤というよりも、維新の会の閣外協力も受ける「自維連立政府」体制。この構図が政策実行力や党内調整にどう影響するかが注目される。
  5. 女性首相としての期待と重圧:首相が女性という事実自体に注目が集まるなか、政策実行・支持基盤の構築という点で、先例の少なさが逆に課題となる可能性もある。

政権の課題と展望

高市内閣の最大の課題は、分裂した連立構造の中で安定した国会運営を維持できるかどうかにある。維新との政策調整、財政規律をめぐる党内対立、そして公明党・立憲民主党の攻勢など、前途は多難である。また、国際的には中国・北朝鮮情勢や円安対策なども待ったなしだ。

一方で、女性初の首相としての象徴性、若手閣僚の登用、維新との政策連携は新しい政治の兆しを示しており、世論の支持率は発足直後で60%前後と堅調な滑り出しとなった。

高市内閣は、戦後政治の転換点を象徴する政権である。保守の再編、女性リーダーの誕生、そして財政・安全保障の再定義を通じて、停滞からの脱却を掲げる。国民の期待を背景に「日本再起内閣」としての真価が問われる。