今日から野球のワールドシリーズ。最強メンバーのチームとされるドジャーズとカナダから32年ぶりにここまで進出したブルージェイズの戦いは昨今の米加関係も含め、異様な盛り上がりとなっています。チケットは転売が横行し良い席ならば日本円で数十万円という水準ですが、それでも飛びつく人がいるということは株価上昇で一部のバブっている人たちのカネ余り現象とみてよいでしょう。今度改めて書きますが、実体経済は寒風ピューピューでちょっと心配ではあります。
では今週のつぶやきをお送りいたします。
金利が下がることと株価が上がることは背反か?
経済の教科書的には金利が引き下げられるのは景気が悪く物価が目標に達しなかったり、雇用情勢が悪化するからであります。物価目標は一応2%という数字が世界の暗黙の了解となっていますが、必ずしも2%に到達した時に政策を変えるわけではなく、そこに向かうベクトルの強さ次第でスピード調整をします。今日発表されたアメリカのCPI(消費者物価指数)はコア、総合とも事前予想を下回り、次回のFOMCの利下げのみならず、あわよくばその次(12月)も利下げ継続か、という読みでしょう。ちなみに10月のCPIは政府機関閉鎖のため、データが揃わず発表されない公算が高いようですが。
一方、株価が上がるのは景気が良く、物価が上がり、売り上げも上昇する場合が多いと思います。つまり本来であれば金利が下がることと株価の上昇は二律背反にも見えます。なのに金利が下がるといえば株価が上がるのは何故かといえば企業の借入金の金利負担が下がるからであります。特にテック関係、それもAIに注力している企業は日経の「世界のテック借金200兆円、10年で4倍 AI投資で膨らむ『バブルの芽』」というタイトルだけ見てもなるほどと思うでしょう。ちなみに私を日経信者と思っているかもしれませんが、日経はロイターやブルームバーグでは代用できないデータ量を持っているのは事実なのです。つまり日経のどこを読むかその取捨選択をすればよいだけです。私も全部を鵜呑みにはしていません。
さて、その二律背反かもしれない状況下で「バブルの芽」かどうかを判断するのは難しいです。いみじくもザッカーバーグ氏の「投資するリスクより投資しないリスクが高い」という言葉が場の雰囲気を表しています。しかし必ず言えることはこの挑戦者たちの全員が成功するわけではないのです。テレビ番組の「SASUKE」同様、ゴールできるのはごくわずか。とすれば負け組は多大なる借入金をどう処理するか、これは難問なのです。市場の雰囲気は「今、そんな弱気でどうする?」であります。私ならAIの開発よりもAIがもたらす社会の変化のギャップを予想し、不足するところを埋める企業に投資したいですけどね。「人の行く、裏に道あり、花の山」です。
高市氏の所信表明演説
氏の性格がでた所信表明でした。内容は想定内で、まずはぶち上げるだけぶち上げるでよいのでしょう。一部は観測気球もあります。例えば外交などはそう見えます。また財政から外国人政策まで広くカバーされているのでこれを野党のみならず、世論がどう消化し、どう議論を展開するか次第だと思います。高市氏は保守派でありますが、税や社会保障制度は改革派に見えます。つまり保守とか改革という括りではなく、今までのやり方に疑問符をつけ、手つかずのところを変えていこう、ということに見えます。その点で個人的には氏をパイオニア(開拓者)として見たほうがスッキリすると思います。
第219回臨時国会における高市内閣総理大臣所信表明演説 自民党HPより
その中で私が一番期待しているのは実は「国家情報局創設への検討」であります。これは日本がスパイ天国であり情報が筒抜けになっている実態を踏まえ、現在の内閣情報調査室を格上げするものですが、むしろ4つの情報ソース(警察、外務、法務、防衛)がバラバラに動き内調でまとめ上げる仕組みをもっと組織化することは今更ながらようやく動いてくれるのかと思っています。スパイ防止関連法案の早期成立も目指すとしています。個人的には装備品を買うよりこちらの方が最優先されるべきと思います。いまや公明党は野党ですから推し進められると思います。
物価対策については一番力を入れると言っていますが、私は正直、よくわからないです。数日前に指摘したように片山財務大臣は積極財政派とされますが、私は高市氏も片山氏もリバランスによる税の効率化を目指しているように見えます。前のコラムで書いたように適度な物価上昇はハッピーなはずなのです。企業業績、サラリーの上昇、国の財政へプラス、つまり企業、家計、政府の3つの経済主体がうまく回るのです。よって下手な物価対策よりここは日銀に任せればよいと思います。積極財政をするならばその効果をどう予見するか、であります。私は日本の体質変化のための積極財政は賛同します。
変革の日本!?
前の話に似てしまいますが、最近の日本を見ていて何か過去と決別して新しい世界に進みたいという気持ちがちらほら見えてきます。最大の変革意識は政治かもしれません。古い自民党体質からの離脱意識は政治とカネの問題に国民の関心が未だに高いことがあげられます。憲政史上の初の女性首相、そしてその高市首相の組閣は思いっきりの良い人事のように見受けられます。吉と出るか凶と出るかは分かりませんが、ベテラン議員も散りばめているので大ポカはないと思います。
公明党が離脱したこと、維新がその間隙をついてとりあえずポジションを「仮押さえ」したことも面白い動きだと思います。仮押さえという表現は維新も自民党と一定の距離感を置きながら今後の情勢次第という作戦なのでしょう。高市氏の推進力次第ですが、政治は大きく変わる可能性を秘めています。目を転じてビジネスを見ると先週号の日経ビジネスの特集が「黒字でも人を減らす」。つまり儲かっている企業でもリストラをしたり構造改革に勤しんでいるというわけです。理由は目まぐるしく変わる世の中におけるスタンダードの変化対応でしょう。
日本の物価も80年代に経験して以来のような上げっぷりだし、若者の意識も変わりつつあります。今までは大学を出れば正社員雇用が待っているというエスカレーター式の人生でしたが、AIの普及で従業員も残れる人とそうではない人が出てきそうです。急速な二足歩行のロボット普及で工場は配送センターなどではいよいよ人手いらずに向かうもカウチに寝そべっていても生活はできません。「このままじゃヤバいぞ」という意識はあらゆる方面で生まれてきそうで今後数年で大きな意識変革が起こりそうな気配です。
後記
実は今日、このあと私は病院でひざの手術です。学生時代に痛めた古傷で同じ手術は3度目です。今回の手術までの待ち時間は7-8カ月だったと思います。緊急を要する手術ではないのでもっと待たされるかと思っていたのでラッキーだと思います。こちらの手術では入院は極力避けます。私も午後1時45分予定の執刀でたぶん、手術に1-2時間。麻酔が効いているので起きたらいつの間にか大部屋に移動していて執刀医が結果を紙に書いてベットの横に置いておいてくれているはずです。そこで着替えて看護師さんに「さようなら」と言って家に帰るという超効率的処理です。お金はもちろん無料です。病院に会計窓口がないのがカナダの特徴でもあります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年10月25日の記事より転載させていただきました。