トランプ米国大統領の訪日にあわせて、日本政府、特に高市早苗首相が、目を見張る歓待ぶりを見せた。ノーベル平和賞に推薦したり、ゴルフのパターを贈呈したりするトランプ大統領の個人的嗜好にあわせた歓待から、かなり大規模な予算措置を伴う対応も行ったようだ。
日米首脳会談でのトランプ大統領と高市首相 首相官邸HPより
首相就任間もない高市首相にとっては、トランプ大統領との関係構築は、失敗が許されないプロジェクトであっただろう。もちろん日本にとってアメリカとの関係は特別なものであり、誰が首相でも、誰が大統領でも、首脳間の信頼関係を基盤にした安定した二国間関係が、重要でなかったことはない。
ただ、高市首相は、安倍晋三元首相の後継者を自負している。自民党総裁選に勝ち抜くことができたのも、失った右派・若者票を取り戻し、第二次安倍政権時代の強い自民党を取り戻せるのは高市氏だ、という期待があったからだろう。相手は、安倍元首相が特別な友人関係を培ったトランプ大統領自身だ。内閣支持率や自民党の支持率も、トランプ大統領に気に入られるかどうかで決まる、そういった精神的に非常に高揚した状態でトランプ大統領を迎えたかのような高市首相の様子が、世界に配信された。
高市首相は、施政方針演説においても、中国に対する警戒心を前面に押し出すことによって、右派政治家としての存在感を強調しようとした。この外交姿勢の前提になるのが、アメリカとの蜜月関係の維持強化だ。政府の官僚層も、高市首相を盛り上げるべく、相当な準備をしたことだろう。積み重ねられた大規模予算措置の合意内容は、政府全体をあげてトランプ大統領を歓待するための努力を積み重ねたものであったに違いない。トランプ大統領の歓心を買うために、大統領が何よりも強く望む「お金」でそれを表現した。
それにしても異様さを感じさせるほどの首相のはしゃぎぶりを、いったいどう理解すれば良いのか。高市首相が日本人女性であるだけに、上目遣いでトランプ大統領に気に入られようと必死になっている姿が、あまりに強烈な印象を残した。
問題は、これが本当に日本の「国益」に合致しているのか?だ。
「国益」に合致しているとすれば、いったいどのような形で合致しているのか。
万が一にも、内閣支持率や自民党の支持率のために、巨額の税金を投入し、大量の国債発行を不可避にした、ということがなかったかどうか。
厳しい審査が必要だ。
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