反日どこへ?:高市首相を絶賛する韓国・李在明大統領の胸算用

1日、APEC閉幕後の会見で韓国の李在明大統領が「とても良い印象を受けた。心配ごとがすべて消えた」と述べ、高市早苗首相を高く評価した。日韓首脳の初会談(10月30日)以降、両国は「未来志向」の関係強化を確認しており、李政権の対外環境と内政の制約を踏まえると、日韓は接近せざるを得ない状況になってきている。

  • 李大統領の発言と評価
    李大統領は高市首相を「卓越した政治家」と称し、会談を経て懸念が解消したと強調。次回の「シャトル外交」は高市首相の地元・奈良での開催を打診したと明かした。
  • 首脳会談の位置づけ
    10月30日の初会談では、日韓関係の「未来志向の発展」で一致。関係強化の必要性を双方が確認し、当面は協調路線を優先する姿勢を示した。
  • 中国との関係改善が難しい背景(李政権側の事情)
    23年の対中貿易は31年ぶりの赤字に転落。中国市場への依存構造の変調に加え、国内では対中感情の悪化が長期化しており、李政権が「対中関係改善の政治的メリット」を取りにくい環境が続く。
  • 世論環境:嫌中の高まりと対日感情の相対改善
    近年の調査では、韓国内の対中好感度の低さが固定化する一方、対日感情は緩やかに改善。李政権にとっては日韓の民間交流や人の往来を拡大することが国内世論とも整合的になりやすい。
  • 米中不確実性と「トランプ大統領の再登場」
    トランプ大統領の復帰で同盟国に対する要求や対中戦略が揺れ動く中、日米が安全保障・レアアース確保などで接近。韓国にとっても対中と米国のはざまでのリスク管理が難しく、まずは日韓協調で「時流に乗る」選択が合理的になっている。
  • 実務的な前進の芽
    両首脳は課題を「真正面から扱い、将来に向けて協力」との認識を共有。シャトル外交の継続、人的交流・観光・スタートアップ連携など民間主導の分野から弾みを付ける構えのようだ。
  • 急接近のリスクと留意点
    歴史・領土などの懸案は残存し、国内政治の力学次第で摩擦が再燃する可能性はある。とはいえ、足元では背に腹は代えられない「現実路線」に両首脳が傾斜している。

就任前は極度の反日姿勢で知られた李在明大統領の「心配は消えた」という発言は、対中関係の政治的コストと米中不確実性の高まりの中で、日韓の民間交流と実務協力に軸足を置く戦略への転換を象徴したものとなった。高市政権との親交をテコに、シャトル外交や往来拡大から関係を底上げし、日韓関係の懸案は「管理」しながら関係を維持するという局面に入ったと言える。

高市首相と韓国・李在明大統領 2025年10月30日 日韓首脳会談 首相官邸HPより