韓国は本当に原潜を保有できるのか 海自元潜水艦長がみた課題と疑問 朝日新聞
原潜は水中速度30ノット(時速約55キロ)以上の高速で制限もなく長時間連続で航走できる。補給や整備を考えあわせても、潜航したまま数カ月単位での連続作戦行動も可能だ。
原稔官房長官は31日、報道各社の取材に応じ、原子力潜水艦の自衛隊への導入について「あらゆる選択肢を排除せず、抑止力・対処力向上に必要な方策を検討していく」と述べた。
原潜をめぐっては、防衛省が設置した有識者会議が9月、導入も念頭に「次世代の動力」活用の検討を提言したほか、自民党と日本維新の会の連立政権合意書にも、同様の表現が盛り込まれた。
原潜保有は調査や研究、議論は大いにすべきです。タブーにすべきではない。
だけどね、非現実的なんですよ。

木原稔官房長官
首相官邸Xより
ですが主張している人たちは現実を見ない、キヤノンのシンクタンクにいるような威勢のいい安全保障業界の人たちや、自称有識者です。
機能だけを見れば確かに原潜は魅力でしょう。しかし、それを我が国が運用できるのか。
まず原子力の平和利用という原則を変える必要がある。そして母港を確保できるのか。イージス・アショアですらあれだけ反対があって頓挫したわけです。簡単に見つかるわけがない。
さらにインフラと建造に莫大な金がかかる。これから少子高齢化が進むわが国で果たしてそれだけの予算を確保できるのか? 下手をすると高市政権の自称「責任ある積極財政」、客観的に見れば「責任なき積極財政」を進めれば、金利の高騰と円安による税収不足に陥るでしょう。例えば国家予算の半分が国債費になるような事態になったら、それどころじゃないでしょう。
そして何よりクルーが集まりません。今の何倍も航海が増える原潜のクルーなんて集まりませんよ。今ですら四苦八苦しているんですから。
安倍政権時に潜水艦隊を16隻体制から22隻に引き上げました。16隻でも満足に乗員が集まらないのに、現実を見ない安倍晋三のおかげで現場は大変になりました。16隻時代ですら乗員が不足して、やめた潜水艦乗りを一本釣りしていました。
今ですら乗員足りないのに、原潜にしたらもっと集まりません。やめるクルーが増えるでしょう。それは医官にも言えます。今ですら本来乗っているべき医官が乗っていません。原潜になったら余計になり手がいなくなるでしょう。
そもそも他国と比較するだけの情報もないのに「海自の潜水艦は世界一の通常動力潜水艦」などと自画自賛している連中を信用できますか?
それに潜水艦の寿命は16年と嘘をついていた。もちろん潜水を繰り返していけば船体の強度に問題が出てきますが、他国は米海軍を含めて30年ぐらい使っていますよ。これは単に三菱重工と川崎重工の2社を食わせるための方便です。
そうは言えないから運用寿命を16年だと言ってきたわけです。軍事情報に疎い一部の軍事愛好家たちはそれに騙されて疑うことすらしなかった。
ところが22隻体制になったら途端に延命工事して寿命が延びるようになった。まさに語るに落ちる、です。
そういう「虚言癖のある」人たちを「専門家」と信じていいかという問題もあります。
むしろやるべきことは22隻の潜水艦を16隻あるいは12隻に減らして、乗員を確保して、さらに待遇を改善し、1隻に2組のクルーを揃えるべきです。そうすれば離職者も減らせるし、艦の稼働率も上がるので、より少ない隻数で任務を達成できるはずです。
国防は威勢のいいことを言って金を多く使うことではなく、頭を絞ってより効率的で現実可能な策を講じることです。
戦時中の標語ではないですが、「足らぬ足らぬは、頭が足らぬ。」
■本日の市ヶ谷の噂■
海自の潜水艦は定員に入っている医官が実は搭乗していないことは、キヨタニの執拗な報道でよく知られるようになったが、実は約三分の一の潜水艦では補給長もおらず、水雷長が兼務。実は潜水艦隊では乗員から補給長を減らして、それを地上勤務にしてオカに上げる予定、との噂。
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東洋経済オンラインに寄稿しました。
拡大する防衛費を防衛省・自衛隊が適切に使えていない可能性。陸上自衛隊による、銃の調達や取り扱いから垣間見える「知識不足」の疑い
https://toyokeizai.net/articles/-/911653
ソニーグループが「隠れた防衛関連企業」といわれる理由、実は同社製のある汎用品がミサイルやドローンなどに欠かせないパーツになっていた
https://toyokeizai.net/articles/-/907817
Japan In Depthに寄稿しました。
防衛省、新型18式防弾ベストの調達停止と改良の背景
https://japan-indepth.jp/?p=89057
海自P-1哨戒機、事実上の「調達中止」も?高騰コストと低稼働率の現実
https://japan-indepth.jp/?p=88936
来年度予算案における陸上自衛隊の第15師団と特殊作戦団の新設
https://japan-indepth.jp/?p=88956
2025年度陸自の戦力強化:装甲車両と小火器の最新調達リスト
https://japan-indepth.jp/?p=88960
失策を隠蔽し「大本営発表」繰り返す防衛省:自衛隊の予算を増やすべきか
https://japan-indepth.jp/?p=88343
虚偽報道問題から考える記者クラブの存在意義
https://japan-indepth.jp/?p=88339
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https://japan-indepth.jp/?p=88343
P-1哨戒機の高コストと低稼働率:会計検査院報告が示す課題
https://japan-indepth.jp/?p=88306
会計検査院P-1報告書を読む その1
https://japan-indepth.jp/?p=88204
会計検査院P-1報告書を読む その2
https://japan-indepth.jp/?p=88215
会計検査院P-1報告書を読む その3
https://japan-indepth.jp/?p=88221
会計検査院P-1報告書を読む その4
https://japan-indepth.jp/?p=88227
P-1哨戒機失敗の本質
https://japan-indepth.jp/?p=88057
陸自に砲兵装備開発と運用能力はあるのか:19式装輪自走155mm榴弾砲は失敗作。
https://japan-indepth.jp/?p=88027
自衛隊のヒートマネジメントは遅れている
https://japan-indepth.jp/?p=87990
防衛大臣記者会見|令和7年06月13日(金)で質問しました。
https://www.youtube.com/watch?v=BX64YTsuBIU
12日の陸幕長、空幕長会見で質問しました。
6月12日陸幕長会見での質問。
https://www.youtube.com/watch?v=6yUSZHIIYls
空幕長会見2025年6月12日
https://www.youtube.com/watch?v=kNHiSikwqqs
Note に有料記事を掲載しました。
内張り装甲とスポールライナーの区別がつかなかった防衛省とJSF君
https://note.com/kiyotani/n/n5f35d980fc82
財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)
財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年10月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。








