高市総理が自民党総裁に選ばれて以降のメディアによる反高市報道に、日本のメディアの質の低下を見た。しかし、高市内閣の支持率の高さゆえか、それも鳴りを潜めてきた。この1週間の外交デビューを見ていると頼もしい限りだ。総理に就任する前の発言をもってして、その人間のイメージを植え付けようとしているようだが、君子はその時々の状況を見て、柔軟に対応できるのだ。防衛力の増強をもって、戦争に近づいていると非難するが、ウクライナやガザの状況を目にして、日本の国民や領土を守るために、何が必要かを考えてみればいい。ガザの飢饉にあえぐ人たちを見て、それが、将来の日本で起こらないと保証できるものがあるのか?
そして、「世界の真ん中で咲き誇る日本」の響きは、日本の戦後急成長を共にしてきた日本人として心地よい。「働いて、働いて、・・・・・・・・」が批判を浴びたが、これこそ、この国が生き延びる手段であり、これ以上は働けないような人生を歩んできた人間として、現在の日本の危機意識のなさには悲しくなる。
そんな中、今日は、アメリカ(正確にはカナダ)とマレーシアから嬉しいニュースが入ってきた。まずは、トロントで行われた米国ワールドシリーズの第7戦でロサンゼルスドジャースが勝利して優勝した。そして、MVPは4勝中3勝をあげた山本由伸投手が手にした。単に3勝をあげただけでなく、ドジャースの名のある選手たちが、山本投手のFor the teamの姿勢を褒めたたえていたことが、何よりもうれしかった。
山本由伸選手インスタグラムより
第3戦の延長18回の時点で、ブルペンに入り登板の準備をしていた。投手を使い果たし、後がない状況で、2日前に完投勝利をあげた山本投手が19回以降登板することを志願していたようだ。サヨナラホームランを打ったフリーマンも、200勝投手のカーショー投手も、ブルペンの姿を見て意気に感じたコメントを残していた。もちろん怪我をするリスクは高いが、それでも、自分のリスクを背負って優勝に賭ける姿に、私の目頭も熱くなってきた。
そして、昨日100球近く投球したにもかかわらず、9回の途中から登板して、優勝を決めた11回の終わりまで投げ切った。MVPの発表時に選手から大きな山本コールが起きたのも当然だ。自分の生活が何事にもまして大切だという人の人生は尊重するが、世のため、人のために生きたいと思っている人に、働き過ぎるなという声には賛同できない。働き甲斐改革こそ、今の日本には必要なのだ。
そして、夕方にはマレーシアで開催された米国女子ゴルフのメイバンク選手権で、山下美夢有選手が優勝した。3人によるプレーオフを制しての優勝だ。8月の全英ゴルフ選手権でも優勝している。大阪府寝屋川市出身の大阪人だ。山本投手も山下選手も私より半世紀近く後に生まれた若者であるが、日本人が世界中で輝いていることはうれしいし、頼もしいことだ。まさに、世界で咲き誇る日本の象徴だ。
この二人も、大谷選手も、1日8時間のルーチンだけをやっていて今日を迎えたわけではない。自分の目標を定めて、そのゴールを目指して人の何倍も努力してきた結果なのだ。努力できる人、もっと頑張りたい人を抑え込むような働き方改革などおかしな改革だと思う。もっと、個々の人の考え方、人生哲学に沿って、個性を尊重する社会が必要だ。
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編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2025年11月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください