
Juan Ruiz Paramo/iStock
「うちは兄弟仲がいいから」
「家族で揉めるなんてありえない」
そう言う人、多い。でも、そういう家族ほど危ない。いや、これ、煽ってるわけじゃなくて。本当にそうなんだ。仲が良いからこそ、崩れたときの反動がすごい。
田園調布に家を建てたAさんの3人の息子たち。まさに「仲の良い兄弟」の見本みたいな存在だった。Aさんの自慢の息子たち。
「知識ゼロでも絶対後悔しない! 損しない! 不動産相続の新・ルール」(髙橋 大樹著)WAVE出版
誰もが羨む家族がどうなった
で、Aさんが亡くなった。相続の話が始まった。最初は普通だった。「どう分けようか」って、みんなで話し合っていた。
ところが。土地を3つに分割できないことが判明。誰も土地全部を買い取る金はない。売るか、誰かが相続して他の兄弟に現金を渡すか——冷静に考えれば、どっちかしかない。
でも、冷静じゃいられなかった。
話し合いを重ねるごとに、感情的になっていった。父親が亡くなってはじめて、それぞれの心に溜まっていた不満が噴出した。
「兄貴は昔から親に甘えてた。何かと言えば金を出してもらってた」
「お前だって新車を買ってもらっただろ。すぐにぶつけたくせに」
過去の出来事が次々と蒸し返される。もう、遺産分割の話じゃない。兄弟の恨みつらみ大会である。最終的には弁護士を立てる泥沼の争い。完全に絶縁。以後、二度と連絡を取り合うことはなくなった。
あれほど仲が良かったのに、である。
280坪が招いた親族崩壊
もっとひどい話をしよう(胸糞悪いけど)。都内280坪の広大な土地を巡る争い。Dさんの祖父が遺した土地だ。
相続人は、Dさんの親の兄弟姉妹6人とその配偶者。最初は普通の親戚会議だった。「どう分ければいいか」を話し合っていた。
でも、次第におかしくなっていく。
「私が父の面倒を一番見たのに、なんでみんなと同じ取り分なの?」
「あなたは大学まで出してもらったのに、私は高卒で働かされた。不公平よ!」
法定相続分という明確なルールがあるのに、関係ない。幼少期からの恨みが次々と噴出。何度話し合っても平行線。
で、全員が弁護士を立てた。弁護士が入ると、もう「戦争」だ。送られてくる書面には、何十年も前の金銭のやり取りが詳細に記されている。
「○年○月に○○万円贈与」
「○○の学費として○○万円支出」
数字が並ぶ。それを見て、さらに憎しみが増す。
「ほら、やっぱりお姉さんはお金もらってたじゃない!」
「あんただって学費、こんなに出してもらってたでしょ!」
もう、地獄である。
専門家を入れろ
結論から言う(というか、これしかない)。
早い段階で専門家を入れろ。親族間の感情的な問題は、当事者同士じゃ絶対に解決できない。専門家がいることで、「この分け方は公正である」という客観的な保証が得られる。後々の禍根も残りにくい。
「うちは大丈夫」——そう思っている家族ほど、危ない。手遅れになる前に、今日から話し合おう。
嫌な話だけど、必要な話だ。それだけは、間違いない。
※ ここでは、本編のエピソードをコラムの形で編集し直しています。
尾藤 克之(コラムニスト、著述家)
■
22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)








