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子ども向けEQの事業をやっていた時代、ずっと疑問だった。なぜ子どもたちは勉強が嫌いになるのか。その答えは、思いのほか単純だった。
知的好奇心が刺激されれば、勉強なんか好きになる。それだけ。
昆虫採集好きが理科好きになって、読書好きが国語好きになる。運動神経のいい子に体育嫌いなんていない。当たり前だ。なのに、なぜ? なぜうちの子だけ? と親は悩む。
「勉強しなさいと言わずに成績が上がる! すごい学習メソッド」(藤野雄太 著)永岡書店
親の一言が、すべてを壊す
『勉強しなさいと言わずに成績が上がる!すごい学習メソッド』の著者・藤野雄太さんは、ぶっきらぼうに言う。
「『勉強しなさい』と言われて、『よっしゃ、勉強する気になったー!』なんて思う子どもはまずいません」
正直に言おう。これは親への宣告だ。その一言で、あなたはもう子どもの信頼を失いかけている。
なぜか。簡単だ。「勉強しなさい」というのは、要するに指示だ。強制だ。人間は——いや、子どもだけじゃなく、大人だって——他人の強制を嫌う生き物なんだ。知ってました?
自分で決めたことには、驚くほどやる気が出る。でも強制されたことには? 条件反射的に反発する。親の気持ちは理解できる。わが子の将来を思えばこそ、つい言ってしまう。でもその一言が、逆に勉強嫌いを加速させる。皮肉だと思いませんか。
親たちが忘れていること
勉強嫌いの子どもの親を見てると、共通する傾向がある。それは、遊びを制限しすぎていることだ。
受験学年になると、特にひどい。「今は勉強の時期だから」と、ゲームも禁止、友達と遊ぶのも制限。気持ちはわかる。本当にわかる。でも、そこで親たちは大事なものを見落としている。
それが「心のエンジン」だ。
好きなこと——ゲーム、習い事、部活、漫画、何でもいい——に打ち込んでいる子どもは、心のエンジンがちゃんと育っている。そういう子は、苦手な勉強だって頑張れるんだ。
逆に遊びを完全に奪われた子どもは? 心のエンジンが育たず、何をやっても力が出ない。
実は、「モンスト」なんかのゲームを親が認めてる子の方が、成績が上がることが多い。変でしょ。でも、これが現実だ。
藤野さんが面白いことを言ってた。「子どもの目を見るとわかる」って。
心のエンジンが育ってる子どもの目は、力強い。輝いている。育ってない子の目は? 死んでいる。親の子育ての通信簿は、子どもの目に映る。怖い話だが、本当だと思う。
で、結局何が必要なの?
知的好奇心だけでは足りない。親が必要なのは、あと二つ。
ひとつは「ほめること」。もうひとつは「一緒に勉強することだ」。
一緒に勉強する——つまりね、これは子どもに「お前に関心を持ってる」というメッセージを無言のうちに伝えてるんだ。指示じゃなく、共感だ。親子の時間だ。
結局のところ、親ができることなんて、ほんの少しかもしれない。でも、その少しが、すべてを変える。
わかりやすく言えば、こういうことだ。
「勉強しなさい」は捨てろ。代わりに、子どもの目を見ろ。
尾藤克之(コラムニスト、著述家)
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