オーストリア国家保安情報局(DSN)は6日、イスラム過激派テロ組織「ハマス」が欧州でイスラエルの拠点やユダヤ人を標的としたテロ襲撃に使用する武器をウィーン市内に備蓄していた疑いがもたれていると発表した。同容疑で39歳の英国の国籍を有する男性が3日、ロンドンで逮捕された。英国のテレビ局ITVニュースの報道によると、英国で逮捕された男はドイツに引き渡される予定だ。逮捕された英国人はハマスの幹部の息子だという。
オーストリア内務省の建物、内務省公式サイトから
DSNによると、今回の逮捕は国際協力捜査の一環として行われたもので、ウィーン市内のレンタル倉庫にあったスーツケースから拳銃5丁と弾倉10個が押収された。この武器庫は、テロ組織ハマスの海外作戦組織の所有物とされている。
オーストリア内務省はその公式サイトで「DSNは、ハマスとつながりを持つ世界的に活動するテロ組織に対し、数週間にわたり、国際的に協調された広範な捜査を実施してきた。この捜査の結果、ある組織がヨーロッパでの潜在的なテロ攻撃に備えて武器を備蓄するため、オーストリアに武器を持ち込んでいた疑いが浮上した。捜査の現状によると、これらの攻撃の主な標的は、ヨーロッパにあるイスラエルまたはユダヤ系の施設だ」と説明している。
なお、カーナー内相は、「今回の事件はDSNが国際的に優れたネットワークを構築し、あらゆる形態の過激主義に対して一貫した行動をとっていることを示した。その使命は明確だ。テロリストに対しては、一切の寛容を示さないことだ」と述べた。
ちなみに、ドイツ連邦検察庁は10月1日、イスラム組織ハマスのメンバーとみられる3人を、ドイツ国内のイスラエルやユダヤ人関連施設への攻撃を計画した疑いで逮捕したと発表している。逮捕されたのは、ドイツ国籍の男性2人と、レバノン生まれの男性1人。3人はハマスのために攻撃用の武器と弾薬を調達したという。ドイツでは今年2月にも、欧州のユダヤ系施設への攻撃を計画した罪で、ハマス構成員4人が起訴されている。
ドイツ連邦検察庁が6日に発表したプレスリリースによると、ロンドンで逮捕された英国人の容疑者は2025年夏にベルリンで3人のうちの1人と会い、武器と弾薬を受け取った。その後、これらの品々をオーストリアへ輸送し、ウィーンに保管した。容疑者はドイツへの身柄引き渡し後、連邦最高裁判所の捜査判事に召喚されるという。
オーストリア駐在のイスラエル大使館は6日、「今回の武器押収はハマスがイスラエルとユダヤ人だけでなく、欧州に住む全ての人間にとって脅威となっていることを示している。ハマスは地域的な脅威にとどまらず、自由と民主主義が支配するあらゆる場所を攻撃しようとする世界的なテロネットワークの不可欠な一部だ」という声明を発表した。ダヴィド・ロート大使は「テロリスト集団の武装解除を恒久的に実現し、能力の再構築を阻止することによってのみ、中東、ヨーロッパ、そしてそれ以外の地域における安全と安定を確保できる」と述べている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年11月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。