クマの出没件数は今年、過去最多となり、死者も13人という悲劇が起きています。地元自治体、猟友会まかせでは限界があり、自衛隊や警察の応援が必要です。最もおかしいのは、敵軍の兵士が領土内に侵入してきたら、銃撃、狙撃がするのに、クマに対しては自衛隊は銃撃できないことです。
自衛隊は常に銃撃訓練をしており、クマ退治はおやすい御用のはずなのに、自衛隊法には、クマに対する銃使用の規定がありません。銃も備え、訓練もしており、人間が生死の危険にさらされているのに、使用規定がないから銃を使えない。防衛省は「鳥獣駆除の訓練をしておらずノウハウがない他、自衛隊法の任務として想定していない」と、説明しています。
「鳥獣駆除の訓練をしていない」は見え透いた弁解でしょう。うろつくクマを狙撃できないようになっている法整備は平和ボケでしょう。ネックになっているのは、クマの出没が10年ほど前から増えているのに、自衛隊法を改正してこなかった怠慢によります。
秋田県でクマ対策支援を行う自衛隊 小泉進次郎防衛相Xより
自衛隊基地に侵入しても狙撃できない
クマが自衛隊の基地に侵入してきた場合も、規定では、自衛隊員がクマを撃てない。地元の猟友会に依頼するしかないらしい。こんな間抜けみたいな法規定をしているのは、日本くらいのようです。
チャットGPTに聞いてみると、「米国では、野生動物保護局が明確な権限を持っており、人間を脅かしたクマ、ピューマは即時に隊員が射殺すると、定めている」、「カナダでは、クマが人家に近づいた時点で『問題個体』と指定して、専門部隊が即座に出動して、射殺する」。
さらに「日本では、クマは鳥獣保護法で守られており。駆除には捕獲許可が必要で、緊急時も自治体の判断がないと銃で撃てない」と、チャットさんは回答してきました。緊急時にいちいち許可を得る。そんなことをしているうちに、クマは逃げてしまいます。
人間より鳥獣保護優先の法体系
平時と緊急時の区別を立法府も行政府もしていないのです。クマに襲われ人が13人も殺害される事態は緊急事態でしょう。鳥獣保護を優先し、目の前にをクマが出没しているのに「捕獲許可」、「自治体の判断」というのは、平時の規定を変えてこなかったのは、行政側の怠慢です。
自衛隊が出動し、銃器を使用できるのは①国防出動(自衛隊法76条)②治安出動(同78条)③災害派遣(同87条)です。クマは自衛隊規定を知っているのか、平然と人家、学校、街中をうろうろしている。
自衛隊法の改正を急げ
騒ぎが大きくなって、自衛隊が秋田に派遣されることになりました。なんと自衛隊法100条に基づく輸送事業(ワナ、檻の輸送)として行う。この緊急事態にいたっても、輸送業務として出動し、銃器では駆除しない、使用できない。平和ボケですね。法改正を早くすべきだったのです。
また、環境相(自然保護担当)は「市街地でも自治体判断で発砲できる緊急銃猟の規定を設け、すでに10件の事例を把握している」と、述べています。当然の措置で、もっと早く動くべきでした。政府、関係者の危機感が足りません。
日本の国防は大丈夫か心配になります。クマ1頭を狙撃するのに煩雑な手続きを要する危機管理は心配です。新たな応急措置がとられ、市町村による「緊急銃猟」に加え、警察の専門部隊によるライフル駆除(警察官職務執行法)ができるようにはなりました。合わせて自衛隊法の改正を急ぐ必要があります。自衛隊の基地に侵入したクマくらい、自ら駆除できなければ笑われます。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2025年11月8日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。