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中国を単なる共産主義国家、あるいは社会主義国家の理想、または資本主義や自由主義経済圏に争う理想追求の具現と見るのは、中国の歴史を知れば実に浅薄な判断だと感じるだろう。
そもそも中国は多民族国家であり、政争の歴史と血塗られた権力欲が交錯する野蛮な歴史こそが中国の本当の姿だ。詳しくは司馬光の著した『資治通鑑』を読むとよい。『温公通鑑』『涑水通鑑』とも言う。
中国の歴史書としては『史記』が有名であるし、そもそも『資治通鑑』自体330万文字もあって、私も全文は読んではいない。読んではいないが、かつて翻訳された部分は飽くまで日本人の琴線に触れる程度の部分だけで、真実の歴史に踏み込んだ内容ではなかった。これらの手法は、中国を礼賛する共産主義者の手口のようなもので、共産主義の素晴らしさを具現したのが中国だとプロパガンダを繰り返してきた。
しかし、以前も触れたように本当の中国史と中華思想を学ぶ為には、『資治通鑑』は必須の書であると考える。
ではこの本に触れることはどんな意味があるのだろう?
率直に言って、今、日本企業の多くは中国人についての理解は非常に薄いと考えている。昔の中国人と現代の中国人は果たして違う人種だろうか?私はそうは思わない。13億人という日本では考えられない人口を抱える国である以上、いろんな人がいるのは当然だが、少なくともその国民性のベースにあるものは、今も昔も変わっていないだろう。
その意味で、『資治通鑑』を斜め読みでも良いから中身を知っておくことは重要だ。その中身は、人肉食の歴史を赤裸々に語ったもので、飢饉や戦争で食べるものが無くなると、人肉を食糧としていたことが書かれている。日本人にしてみれば考えられないことだが、当時の中国国内では普通のことだったようだ。食べるものが無いなら、人肉を食べれば良いという彼らにしてみれば当たり前のことなのだろう。
似たようなことは現代でも起きている。
新型コロナウイルスが蔓延した時、猫がこのウイルスを媒介すると言う風聞が広がり、高層階のマンションの窓から飼い猫が相次いで投げ捨てられたということがあった。これは何を意味するか?
『資治通鑑』の史実、今から1,000年以上前の中国も、今の中国もやっていることは同じで、自分さえ良ければそれで良いから、強者である人間は食糧が無くなれば人肉でも食べるし、自分が病気になりたく無いから可愛がっている猫でも平気で捨てる。
もう少し時代を遡れば、中華思想と共産主義を巧みに組み合わせることで中国国民を扇動した事例がある。毛沢東はプロレタリア(都市労働者階級)の革命思想と中国国内の農民の解放と結びつけることによって、中国国内に革命思想を植え付けた。毛沢東自身は『資治通鑑』の愛読者であり、彼の革命思想に通じる手法は、多くを『資治通鑑』を教本に行われたと言われている。煎じ詰めれば毛沢東の政敵を排除する手法の元になったのだ。
毛沢東は文化大革命、大躍進政策によって実に4千万人を餓死させたと言われている。ところが、知略攻防の限りを尽くす毛沢東にとって、そんなことは取るに足らないことであり・・・