2025年の早期退職募集は1万人超で「黒字リストラ」はもはや平常運転

2025年の上場企業で「早期・希望退職」が急増しており、特に黒字企業でも当たり前に制度を実施する流れが定着しつつある。

AI時代の人材構造の変化や、70歳雇用の負担といった企業・従業員双方の事情が重なり、早期退職が“新しいキャリア制度”として広がっている。

  • 2025年1月〜11月10日までに早期・希望退職を募集した上場企業は41社、対象は1万1045人で、前年を上回るペース。
  • 募集企業の約8割は東証プライムで、人数の9割を占める。電機や機械、情報通信など、構造改革を迫られる業種が中心。
  • 黒字企業による募集が7割を超え、「黒字リストラ」が広がっている。理由は年齢構成の見直しやAI導入への対応。
  • 50代では年収が半減しても転職が難しく、ゼネラリスト型人材が専門職に移りにくい構造問題がある。
  • 一方で、第一生命のように募集枠の1.8倍の応募が殺到する例もあり、従業員側も早期退職を選びやすくなっている。
  • 背景には、企業側の「70歳まで雇用機会確保」という努力義務の重さと、AI時代に合わせた人材の新陳代謝ニーズがある。
  • 従業員側も70歳まで働き続けることへの抵抗感や、社会保険料負担の重さを理由に早期退職を希望するケースが増えている。
  • 現在の早期退職は“追い出し部屋型”ではなく、専門性を高めた人やFIRE志向の人が利用する「成功モデル」へ変質している。
  • 若手も「出世一択」から、「早期退職を前提としたキャリア設計」へと価値観が変わりつつある。ジョブ型雇用との親和性も高い。
  • 東大・柳川範之教授ら識者が提唱した「40歳定年制」が、社会情勢の変化を経て、早期退職制度という形で現実化しつつあるとの見方もある。

早期・希望退職は、もはや一部企業だけの特例ではなく、黒字企業も含めた「平常運転」になりつつある。AI時代の人材刷新や70歳雇用の負担、従業員側のキャリア観の変化が重なり、早期退職は今後ますます定着していく可能性が高い。