自民党と日本維新の会が、国会議員の月額歳費(給与)を定める歳費法を今国会で改正する方向で調整に入ったという報道がありました。
もし成立すれば、歳費は現在の 月129万4,000円 → 134万4,000円(+5万円) へ。実に1999年以来の引き上げです。
背景には、国家公務員特別職の給与引き上げが予定されていることや、民間賃上げの流れがあることも事実です。制度的合理性だけを見れば、国会議員の歳費だけ据え置くのが正しいのか――これは丁寧に議論すべき論点でしょう。
しかし今回の議論は、単なる給与調整に留まりません。維新が“身を切る改革”を掲げて国政に挑んできた十数年の歴史が問われる正念場です。
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維新に対する「協力要請」は確実に強まる
維新が与党側に政策協力をするようになり、国会では“実務政党”としての役割が増えています。となれば、自民党からは歳費アップへの協力要請がかかるのは当然の流れ。
しかし、ここで 自民党と同調してスムーズに引き上げに応じる という判断をすればどう見えるか。
- 「結局、与党に近づけば身を切る改革は後退するのか」
- 「維新も既存政党と同じだったのか」
- 「改革政党の看板は掛け替えだったのか」
こうした厳しい視線が、国民から向けられるのは避けられません。
維新の“根幹”が揺らぎかねない局面
維新がここまで支持を伸ばしてきた最大の理由の一つは、何よりも 「自分たちから身を切る」政治姿勢 でした。既得権に切り込むだけでなく、自らにも厳しいルールを課す。
歳費増額への賛否は、党内でも議論が割れて当然です。しかし、ここで軽々しく賛成することは、党の根幹に関わる問題です。
だからこそ、維新が国民に“背中を見せる政治”をどこまで貫けるのかは、極めて重大な判断になります。
採決を棄権し、増額分は自主返納する――という選択肢も
制度上、給与が引き上げられれば、所属議員にも一律で適用されます。
しかし「賛成したくない」「受け取りたくない」という議員も当然いるでしょう。
その場合の一案としては、
・採決には加わらず棄権する(歳費増額に“賛成”しない)
・引き上げ後の増額分は自主返納する(受け取らない)
という態度を明示する方法もあります。
もちろん、返納は根本的な制度解決ではありません。しかし、「国会議員の歳費」という極めて象徴性の強いテーマについて、維新が自らのスタンスを鮮明にする意味では一定の説得力があると考えます。
維新は“実務”と“改革”の両立を示せるか
維新は今、「改革政党としての誇り」と「実務政党としての責任」の両方を背負う立場になりました。どちらか一方だけでは、国民に信頼される政党にはなれません。
だからこそ、この歳費法改正問題は単なる給与論争ではなく、維新が今後どんな政党として歩むのかを象徴する試金石 だと考えています。
与党との協議が本格化するのはこれからです。
編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2025年11月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。