トランプ大統領が提示したとされるロシア・ウクライナ戦争の停戦案の全文が明らかになり、国際社会で大きな議論を呼んでいる。案には、ウクライナの主権確認や不可侵協定など和平に向けた広範な措置が盛り込まれる一方、クリミア半島を含む2014年以降ロシアが占領したウクライナ領の「ロシア領としての承認」が明記されており、欧米やウクライナ側から「ロシアの要求に極端に寄った内容」と強い批判が出ている。
以下は、AP通信の報道で明らかになった停戦案の日本語訳。

2025年9月に会談したトランプ大統領とゼレンスキー大統領 ホワイトハウスXより
停戦案(日本語訳)
- ウクライナの主権は確認される。
- ロシア・ウクライナ・欧州の間で包括的な不可侵協定が締結され、過去30年間のあいまいさはすべて解消されたものとみなされる。
- ロシアは近隣国への侵攻を行わず、NATOはこれ以上拡大しない。
- 米国の仲介により、ロシアとNATOが安全保障問題の解決と緊張緩和、経済協力の条件整備を目的とした対話を行う。
- ウクライナには信頼性のある安全保障保証が提供される。
- ウクライナ軍の規模は60万人に制限される。
- ウクライナはNATO非加盟を憲法に明記し、NATOもウクライナを加盟させないことを規約化する。
8. NATOはウクライナ国内に軍を駐留させない。 - 欧州の戦闘機がポーランドに配備される。
- 米国の安全保障保証(セキュリティ・ギャランティ):
— 米国は保証の対価として補償を受ける。
— ウクライナがロシアに侵攻した場合、保証は失われる。
— ロシアがウクライナに侵攻した場合、協調的な強力な軍事対応・制裁復活・領土承認の破棄などが行われる。
— ウクライナが正当性のないミサイル攻撃をモスクワまたはサンクトペテルブルクへ行った場合、保証は無効となる。 - ウクライナはEU加盟資格を有し、審査中は欧州市場への優先的アクセスを得る。
- ウクライナ再建のための国際支援パッケージ:
— 「ウクライナ開発基金」を創設し、AI、データセンター、技術産業などへ投資。
— 米国とウクライナがガスインフラを再建・共同運営。
— 都市・住宅の再建プログラム。
— インフラ開発。
— 鉱物・資源の採掘事業。
— 世界銀行が特別融資を実施。 - ロシアの世界経済再統合:
— 制裁解除は段階的に協議。
— 米露がエネルギーやAI、北極圏レアアース事業などで長期協力協定を締結。
— ロシアはG8に招待される。 - 凍結資産:
— ロシア資産1000億ドルを米国主導のウクライナ再建に使用し、その利益の50%を米国が受ける。
— 欧州が追加で1000億ドルを投入し、欧州の凍結資産は解凍。
— 残りは米露共同投資ファンドへ。 - 米露の合同安全保障作業部会が協定履行を監督する。
- ロシアは欧州・ウクライナへの不可侵政策を法律に明記する。
- 米露は核管理条約(START Iなど)延長に合意する。
- ウクライナはNPTに従い非核国家であり続ける。
- ザポリッジャ原発はIAEA監督下で再稼働し、電力をウクライナとロシアが50:50で分配。
- 両国は文化理解・寛容促進の教育プログラムを実施し、ナチ思想は全面禁止。
— ウクライナはEU基準の宗教・言語少数派保護を導入。
— 双方が差別措置を撤廃し、メディアと教育の権利を保証。 - 領土問題:
— クリミア、ルハンスク、ドネツクを米国含む国際社会が“事実上ロシア領”として承認。
— ヘルソン、ザポリッジャは前線で凍結。
— ロシアは5地域以外の占領地を返還。
— ウクライナ軍はドネツク州の保持地域から撤退し、そこは中立非武装地帯となり、国際的にロシア領として扱われる。 - 双方は領土を武力で変更しないと誓い、違反時は安全保障が無効となる。
- ロシアはウクライナのドニプロ川商業利用を妨げず、黒海の穀物輸送にも合意。
- 人道委員会が捕虜交換(全員対全員)、民間人拘束者の返還、家族再会、被害者支援を行う。
- ウクライナは100日以内に選挙を実施。
- 紛争当事者には完全な免責が付与され、訴訟や請求は認められない。
- 協定は法的拘束力を持ち、「平和評議会」(議長トランプ氏)が監督し、違反には制裁を科す。
- 双方が指定地点へ撤退すると即時停戦が発効する。
この案が最も強く批判されている点は、クリミア半島を含むロシア占領地の“米国による承認”が明記されていることだ。
また、
- ウクライナにNATO永久非加盟を憲法で義務付け
- 社会制度内で「非ナチ化」を進める条項
など、ロシアが開戦時から主張してきた要求に近い項目も多い。
欧米の専門家からは、
「事実上、ロシアの戦果と占領地を認める文書である」
「ウクライナの防衛主権を大幅に制限する」
などの批判が出ており、案が実際の交渉に持ち込まれるかは不透明だ。






