柏崎刈羽原発6号機が年明けにも再稼働されることになりました。先週のこの項のヘッドラインでは新潟県は容認するのではないかと個人予想を述べましたが、私の勝手予想ではなく、ムードがそのような方向にあったのでこの発表に驚きはなかったと思います。さて、問題はここからです。7号機の再稼働にはうまくいってもあと4年近くかかります。1-2号機は廃炉。3-5号機は東電に金がないので再稼働への対策に手が廻っていません。関東という電力大消費地を抱える中、AIとデータセンターの電力需要も加わる中、将来、電力はひっ迫すると見られます。別の会社がSMR(小型モジュール炉)を関東地区電力供給のために建設しないと関東は本当の電力不足が生じないとも限りません。
では今週のつぶやきをお送りします。
踏ん張れるのか、株式市場
東京市場は木曜日、金曜日で「行ってこい相場」になりましたが、あまり悲観することはないと思います。というのは約1200円下げた金曜日のプライム市場の値下がりは273に対して値上がりは1317銘柄。一般的には「全面高の様相」なのです。なのに日経平均が下げた理由は秋に日経平均が上げた理由の真逆です。 金曜日の場合、ソフトバンクG、アドバンテスト、東京エレクの3銘柄の下落寄与度が1334円ありました。東証の投資部門別売買状況からはこのところ外国人投資家が売りに回り、個人投資家が買いに回る構図が見て取れます。ならば個人投資家好みの銘柄にエネルギーが戻るかが試金石となります。
北米についてはナスダックの弱さが気になります。旺盛なAIやデータセンターへの投資意欲に対して本当に儲かるのか、という疑念でしょう。現在AI関連事業の95%が赤字とされ、勝ち残り戦争の行方は全く見えません。もう1つは昨日発表になったアメリカの10月の雇用統計が強弱感入り混じりの結果で雇用は良いのか悪いのか読み取りにくいことがあります。労働統計局特有の必ずある翌月、翌々月のデータ修正によるばらつきが大きいことも気になります。最近の流れからは雇用統計はもはや3か月たたないと本当のデータと言えないあやふや感が漂います。
今年最後のFOMCは12月9,10日です。物価データについてはPCEが11月26日に出るのである程度カバーは出来ますが、CPIはそれまでに発表されません。FRB高官は利下げ主張派と現状維持派がぶつかり合い、双方の意見が世論を巻き込む状態にあります。パウエル氏の性格からすると「十分なデータがない中、政策変更の決定をするのは本望ではない」と述べる理由にはなります。つまり単に判断先送りとする可能性がないとは言えず、その憶測を巡り市場が日々振り回されている感じでないでしょうか?また、今年の年末消費戦線がどうなるか、その動向も見たいところでしょう。それなりに消費は伸びると思いますが、物欲からサービス欲への転換があり得ると思います。もうモノを欲しい意欲は十分満たされていると思います。それよりナラティブに導かれるソフト消費がトレンドになるのでしょう。
具体的プランに期待、高市積極財政
財政支出とはそれがどう経済全体に波及するかその効果の有無が最大の焦点で金額ありきではないと私は考えています。経済学でいう政府、企業、家計の各部門がそれぞれどう潤うか、です。企業部門は企業努力による稼ぎが給与などを通じて家計部門に影響し、政府部門にも税収として跳ね返ります。政府部門の稼ぎは企業と家計からの受動的な税収であり、能動的には稼げないので国債発行による景気刺激が重要な手段となります。その場合、誰がその便益を受け、それが再び政府や企業部門に跳ね返るのか、この循環こそ注目すべき点だと考えます。
麻生氏が首相の際の定額給付金では現金給付のうち3/4が貯蓄に回って循環しなかったことを悔いていました。家計も企業も「貯め込む」行為によりお金が世の中を回らなくなるなら財政投入してもそれは政府から家計へのアセットの振り替えであり、ほとんど意味がないとも言えます。今回の財政プランの場合、物価高対策が主眼なのですが、プログラム的に一定期限内にそれを使わざるを得ないようにしないとだめです。現金給付もあるようですが、効果は薄いと思います。世の中に消費期限や賞味期限があるものが多いのは一定期間にお金を使わざるを得ないフローの経済を主導するからで、ストックになってしまえば、それは消費の腹がいっぱいで余りが出来たともいえ、失敗だったと考えるべきです。
この考えで行くと極端な話、お金が政府と企業と家計をぐるぐると高速回転し続けるなら投下する財政は金額ではなく、「回転率」と捉えることもできます。折しも円安が止まらないのは海外勢から見れば財政の健全さというより「本当に効果があるのか」が分かりにくいのだと思います。海外勢は意地悪ですから日本国債の売り崩しなんて平気でやりかねません。例えば電力やガス代金に月2000円の補助があったとしてその2000円をどう消費に向かわせるか、この工夫をしないと単なる目先のパッチワークで実質的にはアセットの政府から家計部門への付け替えに留まり、真の意味での積極財政効果は十分に生まれなくなるので今後の具体案に要注目だと思います。
若手創業社長の苦悩
サイバーエージェントの藤田晋社長が退任します。1973年生まれですから52歳という年齢はかなり若い方だと思いますが、日経の記事には「続ければイエスマンばかり育ってしまう」と。創業社長のカリスマ性は外部の人が思う以上に強いもので、組織は上からの指令を忠実に展開するロボットの様になりやすいことを藤田氏が認識されていたということでしょう。私もカリスマオーナーの指揮する組織にいたので、どれだけ優秀な社員の集りだとしても殻を破る力がなかった実態はよく理解できます。
藤田晋社長インスタグラムより
創業社長は時としてヤンチャで事業を次々に展開し、おもちゃ箱をひっくり返したような会社もたまにあります。私が引継ぎで苦労するだろうなと思う比較的若手の創業企業は楽天の三木谷さんのところだと思います。あの会社はとにかく切り口が多く、おまけにご夫婦でオーナーシップの自覚をしっかり持っているので単に後継者への引継ぎのみならず、精神論的に苦労しそうです。日経ビジネスにサイボウズの青野慶久社長の話が掲載されているのですが、上場後、株主から集めたお金を無理くり使うために1年半で9つの企業買収をしたけれど全然やりたい事業ではなかったので頭を下げて8つは売却したそうです。
私もそうなのですが、社長になると何でもできると思いがちであれもこれも手を出したくなるのです。三木谷さんの場合はそれが相乗効果もあり事業が育ったことで全てのビジネスに対して万能な知識と判断力を持ったのです。しかし、一般には得手不得手があり、後継者には簡単にできません。とすれば創業者は創業企業をそのまま次の世代に100%引き継ぐと考えてはいけないのでしょう。私も事業継承のプランがありますが、基本的に何分割かにすることになるはずです。上場企業ならともかく、私の様な零細企業のおもちゃ箱では残念ながら一人の後継者にバトンタッチは出来ないのであります。
後記
今年は教育案件を新たな目標とし、試行錯誤を繰り返しながら準備してきました。その甲斐が実りつつあり、2つの具体的案件が日本とカナダで進みます。今週までのやりとりからは年内にほぼ明白な結果が出そうです。来年はその案件の試運転で再来年から本格始動という大きなピクチャーが出来つつあるので、既に来年の注力案件に思考をめぐらしています。よい不動産が見つかれば当地でグループホームをもう一棟作りたいと思っています。他にも小さな案件が片手ほどありますが、基本的には量から質へのシフトを大きな枠組みにしていきます。そうしないと私も取っ散らかったおもちゃ箱のようになるのでいくつかの箱にしっかり片付けながら箱を頑強に、そしてちょっぴり大きくしたいと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年11月22日の記事より転載させていただきました。