東京駅から常磐線に乗って千葉県へ。松戸市の馬橋駅に来ました。快速は止まらない小さな駅ですが、今日はここから出ているローカル私鉄に乗りに来ています。
その乗り場はこちら。流山電鉄流山線です。東京からわずか7kmしか離れていないのに昭和感溢れるローカル感。ICカードは使えないどころか、自動改札さえありません。初めて乗るのに懐かしさ満点です。
列車が入ってきました。流山電鉄の車両はそれぞれに名前がついているようで、こちらは若葉号というようです。番線表示もエモい。
流山電鉄流山線は1916年に開業、100年以上の歴史を持つ鉄道です。わずか6.8キロの間に6つの駅を有します。かつては沿線で作られた白みりんを運んだり、陸軍の食料を運んだことで発展した歴史があります。
流山市はつくばエクスプレスが開業したことで利便性が高まり、流山おおたかの森などに良質な住宅が次々と作られ発展していますが、もともとは流山電鉄沿いの地域で生産される醤油やみりんの産業で発展を遂げた町です。つくばエクスプレスの開業後、直接東京に出られるつくばエクスプレスにかなり多くの乗客を奪われたようですが、健気にがんばっています。
流山電鉄は「流鉄」(りゅうてつ)の名で親しまれていて、ゆるキャラも「りゅうのしん」といいます。黄色い「菜の花号」と犬を組み合わせたゆるキャラで、優先席の座席のモケットも犬の足跡模様になっています。
ローカル電車に乗って13分。終点の流山駅に到着しました。
看板に描かれる文字も駅舎も何もかもが昭和チック。駅員さんが切符を回収する光景も首都圏の都心部では他にはあまり見かけることがありません。
スマホが普及した今、
新聞のの自販機って、最近見ないですよね?
せっかく流山に来たので、少し歴史ある町並みを歩いて見ることにします。
川の向こうに東京の高層ビル群。
流山電鉄のすぐそばには江戸川が流れています。流山で醤油やみりんの生産が発展したのは江戸川のおかげ。良質な水を得られるとともに、水運も使えるので、江戸に早く商品を届けることができ、江戸の店舗で重宝されるようになったのです。
流山には今もキッコーマングループの流山キッコーマン株式会社があって、ここでみりんなどの商品を生産し続けています。この会社のルーツは万上という江戸時代のみりん製造業者。
その歴史はこちらの「流山白みりんミュージアム」で知ることができます。さほど大きくないミュージアムですが、人気が高いので入場制限があります。事前に予約していくといいでしょう。
館内ではみりんの歴史についての説明や、みりんについての様々な豆知識を紹介してくれています。
みりんを使ったお菓子などのレシピも紹介。
教室の名は「カモシアエール」。
予約制ですが、みりんを使った料理教室も行われています。酒のミュージアムは全国に数多くありますが、みりんのミュージアムってここだけなんじゃないでしょうか。
みりんを使ったソフトクリームは上品な甘さ。煮物意外であまり使うイメージがないみりんですが、砂糖が高価で手が出なかったころはみりんを代用品として使っていた歴史もあり、お菓子とは相性が合うんです。
ミュージアムの近くを歩いていたら、ちょっと曲がった線路。もしかしてこれは…と思ったらやっぱり廃線跡でした。かつて流山電鉄と工場を結び、酒類の搬出や材料の搬入に使われていた線路の跡。かつて鉄道が活躍した証が今もここに残されています。
5分ほど南に歩を進めると古い屋敷に出会いました。一茶双樹記念館。日本を代表する俳人、小林一茶はここに住んでいた商家・秋元三左衛門をよく訪ねていたといいます。この日は建物内はイベントが行われていたので、庭の外から拝観することにしました。
流山で残した一茶の句。
秋元三左衛門も流山でみりんの生産をしていました。万上と双璧を成す「天晴」というみりんで大成します。現在は三菱商事ライフサイエンスが引継ぎ、業務用を中心に製造が続けられています。
旅の最後に訪ねたのは赤城神社。階段を登った小高い丘の上にありました。
大注連縄は10月に締めなおされるそう。重さは何と500キロ!
流山は基本的に平坦な地形ですが、ここだけ小高い山になっています。ここが赤城神社というのは上州の赤城山が噴火した際にここに土の塊が流れ着いたという伝説があるから。「山が流れ着いた場所」ということからここが流山と呼ばれるようになった、地名のルーツとなる土地なのです。
また若葉号でした。
帰りは流山駅から一駅先の平和台駅から馬橋駅に向かいました。
流山おおたかの森駅周辺などの新市街に目が向きがちですが、もともとはみりんの醸造と舟運で発展してきた流山。歴史ある町と新しい町が全く別の場所にできたことから古い町がそのまま残り、歴史を今に伝え続けています。
つくばエクスプレスで手早く来るのもいいですが、昭和チックなレトロ列車に乗って流山の歴史を感じに来てみてはいかがでしょうか。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年11月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。