ベネズエラ石油マネーが作った“国際左翼ネットワーク”の実態

石油収益は“国際左翼ネットワーク”の資金源だった

チャベス前大統領とマドゥロ大統領は、石油採掘と輸出によって得た巨額の収益を資金源として、この15年間にわたりラテンアメリカやヨーロッパの政党や政治家に資金をばらまいていた。その狙いは、彼らが望む社会主義政党の創設と影響力の拡大、さらに反米主義を煽ることにあった。

この国際的な“買収ネットワーク”の全貌を明らかにしたのが、ベネズエラのウーゴ・カルバハル元将軍(通称エル・ポーリョ)である。彼は両政権の下で国軍諜報局(DGCIM)の局長を務めた人物で、マドゥロ政権下でグアイドー氏が政権打倒に動いた際には同氏に味方した。しかしグアイドー氏の失敗後、カルバハル氏はスペインに亡命した。

当時のスペインは、社会労働党と極左政党ポデーモスの連立政権だった。特にポデーモスはベネズエラ政権の資金提供で設立された政党であり、カルバハル氏がその内情を語ることは政権にとって極めて不都合な事実だった。

都合の悪い証人は国外へ——スペインが選んだ送還判断

折しも、米国麻薬取締局(DEA)はカルバハル氏がベネズエラ発の麻薬密輸に関与したとして、スペイン政府に対して米国への送還を要請していた。スペイン政府は、自国政権に不都合な告発を封じるかのように、カルバハル氏を米国へ送還した。

カルバハル氏は10月からニューヨークの法廷で裁かれることとなり、無期懲役が見込まれていた。しかし彼は、これまで得てきた情報を公開すれば刑が軽減される可能性があると判断し、チャベス・マドゥロ両政権がばらまいてきた資金の行方を暴露し始めた。

なお、彼自身も国家麻薬組織「カルテル・デ・ロス・ソレス(Cártel de Los Soles)」の一員であったことが知られている。

欧州と中南米へ拡散した“チャベス・マドゥロ資金”の全貌

スペインでは、極左政党ポデーモスおよび創設者のパブロ・イグレシアス氏らに資金が供与された。彼らはチャベス氏の政治コンサルタントを務め、その見返りとして「スペインで社会主義政党を作れ」という目的のもと資金を受け取った。ポデーモスはやがてスペイン政権の一角を占めるまでに成長した。

また、サパテロ元首相にも資金が提供されており、その一部はロシアの口座を介して、サンチェス首相が社会主義インターナショナルの会長に就任するための政治工作に使われたとされる。

イタリアでは、政党「五つ星運動」にもチャベス氏から資金が流れた。創設者ジャンロベルト・カザレッジョ氏には350万ユーロが現金で渡され、それは外交特権を使ってトランクに入れたまま通関を避けイタリアに入国したとされる。

ラテンアメリカでは、アルゼンチンのネストル・キルチネール元大統領、ボリビアのエボ・モラレス元大統領、ブラジルのルラ・ダ・シルバ元・現大統領、ペルーのウマラ元大統領、ホンジュラスのセラヤ元大統領、コロンビアのペトロ現大統領らが政治資金として受け取っていた。さらに、エクアドルやキューバの政権にも資金が流れていた。

こうしてチャベス氏とマドゥロ氏は、ベネズエラの社会主義モデルを模倣した政党をラテンアメリカと欧州に拡散させ、自らの政治理念を国際的に“輸出”しようとしたのである。