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この記事では、個人事業主の所得となる混合所得(総)の国際比較した結果を共有します。
1. 日本の家計の混合所得(総)
生産された付加価値の合計(GDP)の分配面を見ると、家計へは雇用者報酬以外に営業余剰・混合所得が分配されます。
営業余剰は家計が自分自身の持ち家を不動産業として運用する所得が計上され、個人事業主として事業を行った所得は混合所得として区別して集計されることになります。
今回は個人事業主としての所得の総額である混合所得(総)について、国際比較をしてみたいと思います。

図1 営業余剰・混合所得 家計 日本
国民経済計算より
日本の家計の混合所得は、1990年頃をピークにして減少傾向が続いています。
日本経済のピークとなった1997年では34.6兆円でしたが、2023年では13.6兆円と半分以下に減少しています。

図2 労働者数・雇用者数・個人事業主数 日本
OECD Data Explorerより
日本の労働者数(就業者数)の内訳を見ると、全体としては横ばい傾向が続いていますが、企業に雇われている雇用者(青)は増え続けていて、その分個人事業主(赤)が減っています。
これに伴って、個人事業主の事業所得である混合所得も減少傾向が続いていると理解できそうですね。
2. 1人あたりの推移
次に家計の混合所得について、国際比較をしてみましょう。
まずは人口1人あたりのドル換算値(為替レート換算)で、金額的な水準を比較してみます(個人事業主1人あたりの比較は次回ご紹介します)。

図3 混合所得(総) 1人あたり 家計
OECD Data Explorerより
人口1人あたりの家計の混合所得(総)の推移を見ると、日本は1990年代にアメリカを上回る水準でしたが、その後は減少傾向が続き、近年では他国との差が大きく開いて低い水準となっている事が確認できます。
一方で、イタリアはかなり高い水準が維持されていて、日本の6倍以上です。

図4 個人事業主割合
OECD Data Explorerより
この指標は、労働者の中で個人事業主の割合が高いほど水準が大きくなります。
かつての日本や、イタリアでは他の主要先進国に比べてかなり個人事業主が多かった事がわかりますね。
特にイタリアは近年でも相対的に高い水準が維持されています。
日本はフランスと同程度で、OECDの平均値を下回ります。
個人事業主が多いほど嵩上げされやすい傾向にある事を踏まえた上で眺めていただけると幸いです。
3. 1人あたりの国際比較
続いて、より幅広い範囲での国際比較をしてみましょう。

図5 混合所得(総) 1人あたり 家計
OECD Data Explorerより
1人あたりの国際比較をしてみると、日本は779ドルでOECD29か国中28位と極めて低い水準である事がわかります。
個人事業主の割合が日本よりも低いアメリカが7,454ドルで非常に高い水準なのとは対照的ですね。
金融投資や不動産投資などの高収益事業を個人事業として営んでいる人が多いのか、この傾向はとても興味深いです。
4. 対GDP比の推移
つづいて、GDPの内訳比率とも言える、対GDP比について眺めていきましょう。

図6 混合所得(総) 対GDP比 家計
OECD Data Explorerより
家計の混合所得 対GDP比の推移を見ると、日本は1980年代はアメリカやフランスを上回る水準でしたが、その後の低下傾向が強く、近年では大幅に差が開いています。
アメリカは横ばい傾向が続いているのも印象的ですが、他国では低下傾向が多いようです。
各国で個人事業主としての所得の割合が低下している事が窺えますね。
ドイツは営業余剰は非常に低い水準でしたが、混合所得ではイギリスやフランスを上回りOECDの平均程度の水準のようです。
5. 対GDP比の国際比較
最後に対GDP比の国際比較を見てみましょう。

図7 混合所得(総) 対GDP比 家計 2023年
OECD Data Explorerより
対GDP比の国際比較をしてみると、日本は2.3%でOECD29か国中28番目、G7中最下位です。
GDPへの個人事業主の寄与率が全体で2.3%程度である事も意味しています。
先進国の中では、個人事業主としての所得の寄与が極めて低い状況と言えますね。

個人事業主割合 2022年
OECD Data Explorerより
個人事業主数ではそれほど少ないわけではないはずですが、1人あたりの所得水準がかなり低い事を窺わせます。
6. 家計の混合所得(総)の特徴
今回は、家計の個人事業主としての事業所得の総額である混合所得(総)についてご紹介しました。
日本は個人事業主が減少している事もあり、全体の中での寄与率が非常に小さくなっている事がわかります。
一方で、相対的に見ればそこまで個人事業主の人数が少ないわけではありませんので、1人あたりの所得水準が他国に比べて非常に低い可能性が示唆されます。
フリーランスなどの業務請負や、個人事業として投資事業をしている人も含まれますが、農林水産業など必ずしも所得水準が高くない仕事に従事している人も多く含まれるはずです。
個人事業の所得水準が低く抑えられがちな日本の特徴が垣間見えるような統計データと感じました。
個人事業の職業別の内訳などが統計データであると、より解像度が上がるかもしれませんね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2025年11月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。






