与党税制調査会が、2025年末で期限切れとなる住宅ローン減税を延長する方向で最終調整に入った。対象の拡大や中古住宅の優遇措置など、政府・与党が住宅取得支援を続ける姿勢を明確にした格好だ。一方で、住宅ローン減税という裁量的な優遇策そのものが市場を歪め、不公平を生むとの批判も根強い。
- 与党税制調査会は、2025年末に期限を迎える住宅ローン減税を延長する方向で調整していることが分かった。26年度税制改正大綱に盛り込みたい考えだ。
- 延長にとどまらず、対象物件の拡大も議論されている。現行制度で適用対象が50m²以上となっているところを、40m²以上へ引き下げる案が浮上している。
- 中古住宅の減税措置も拡充する方向で検討が進む。既存住宅市場の活性化と、住宅ストックの有効活用を狙う。
- 住宅ローン減税は、購入者と不動産業界にとって既得権化している側面があり、制度の縮小には強い抵抗がある。政府は住宅取得支援の継続を優先させる姿勢を見せている。
- 低金利維持と円安回避は本来両立しない。日本政府は「金利が上がっても、その負担は減税で埋め合わせればいい」と考えているようにも見える。
- 一方で、ガソリン減税や各種補助金と同様、ターゲットを絞った優遇措置は政策として「筋が悪い」との批判も多い。勤労税額控除のような構造改革型の税制よりも、目に見えやすい減税が国民に支持されがちだという指摘もある。
- 本来、住宅ローン減税は不要で、市場介入による価格の歪みや世代間・世帯間の不公平を生むという問題点が指摘されてきた。とくに都心のタワーマンション価格が高騰する中でも、政府が「買うこと」を推奨し続ける構図が続いている。
- 制度を批判して暴落を待つより、早く住宅ローンを組む方が合理的な人生設計につながるという意見もある。
住宅ローン減税の延長は、政府・与党が即効性のある家計支援を優先した結果といえる。しかし、業界保護と既得権化が進む一方で、市場の歪みや政策の不公平さを指摘する声は強まっている。裁量的な減税に依存する政策を転換し、より中立的で効率的な税制に向けて踏み込めるかが問われる。
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