「紹介制」「取材お断り」というお店の事情

高級店や有名店の中には、紹介制や取材お断りといったお店が珍しくありません。何だか敷居が高そうで閉鎖的な感じがしますが、お店のオーナーと話をしてみると別に偉そうにしているわけではなく、それぞれに理由があることがわかります。

「紹介制」にしているお店は人気があって予約がなかなか取れない場合が珍しくありません。

そんなお店は常連のお客さんがリピートして利用しているため新しいお客さんが一気に入ってくると常連さんの予約にしわ寄せがいってしまいます。

しかも新しいお客さんは必ずしもリピートしてくれるわけではありません。一時の人気で予約を取って結局そのうち来なくなってしまえば、また常連さんの予約に頼らざるを得ません。

であれば、安定した利用をしてくれる常連客を大切にして、新規のお客さんはその人たちの紹介に限定する。

これはお店の安定した経緯を考えれば合理的な判断です。

また「取材お断り」も断る側には理由があります。

テレビや有名な雑誌に掲載されると、その直後に予約が殺到して大変なことになってしまいます。しかし、そのブームもしばらくすれば去ってしまいます。

取材を受けて、お店が混乱するのを避けたいと思っている飲食店は少なくありません。

また、取材は営業時間外の対応となります。通常営業が終わった深夜の時間帯や、本来休憩時間のお昼と夕方の合間に取材を受けることになります。

これはただでさえ長い労働時間がさらに長くなってしまいかなりの負担です。

しかも料理を出して写真撮影をしてもらいインタビューまで対応したのにお店の魅力をきちんと説明してくれない取材はお店からすれば時間の無駄です。

取材を完全にシャットダウンしたり、信頼できるメディア関係者以外の取材を受けないと言った対応をする気持ちはよくわかります。

メディアの取材がなくても良いお客さまに恵まれて、しっかり経営しているお店はたくさんあります。むしろそういうお店には是非行ってみたいと思いますが、中々門戸が開かれていないのが悩ましいところです。

t_kimura/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年12月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。