農林水産省が、事実上の減反政策と批判される「需要に応じた生産」を法律に明記する方針を固めた。高市政権で農政が昭和型の価格維持政策へ逆戻りしたとの懸念が強まっている。
参照:事実上の減反政策を法定化へ 農水省方針 「需要に応じた生産」推進 毎日新聞
- 政府は2026年通常国会に食糧法改正案を提出し、「需要に応じた生産」を法定化する方向で調整している。これは政権交代でもコメ政策を変えられないようにする仕組みとみられる。
- 「需要に応じた生産」は実態として米価を維持するための減産であり、毎日新聞は名称を変えただけの減反政策に他ならないと述べている。本来の生産力を発揮させず、供給を絞ることで望ましい価格を作る仕組みだ。
- 農水省は今年産米の増加(69万トン)で米価下落を懸念し、備蓄米を買い戻して市場から隔離し、来年産は5%減産する方針を打ち出した。鈴木農相は「価格にコミットしない」と述べるが、価格を下げないための供給調整である。
- 需要調整が失敗して米価が高騰したのに、その手法を法律で固定するのは本末転倒である。価格を市場に任せるだけでなく、生産量も市場に任せるべきである。
- さらに農相が提案する「コメ券」は、減反で高くした米価を税金で低所得層に補填する制度であり、4500億円規模の財政負担が生じる見通しと指摘されている。
参照:高市政権の「農政復古」 山下 一仁 キャノングローバル戦略研究所
- 減反補助金で米価をつり上げ、コメ券で対策するという「マッチポンプ型」の政策で、負担は納税者、利益は零細農家とJA農協に集中する構図が再強化される。
- こうした統制農政が続けば、農家所得は改善せず、新規就農者も増えない。農家の高齢化を深刻化させてきた根本原因が再び固定化されるとの批判がある。
農水省が進める法制化は、減反政策を恒久化し、米価維持を優先する昭和型農政への逆戻りといえる。市場競争や生産性向上よりも、既得権の保護を制度として固定化する形になりかねず、農業の担い手不足と構造疲弊をさらに深める危険がある。国民負担で高米価を守り続ける政策を、このまま続けるのかが問われている。

高市首相と鈴木憲和農水相 鈴木農水相Xより






